HODGE'S PARROT

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現代音楽

ヘンツェ≪ナターシャ・ウンゲホイエルの家へのけわしい道のり≫

ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze、1926年生まれ)の≪ナターシャ・ウンゲホイエルの家へのけわしい道のり≫ は、実に興味深い作品である。いろいろな意味で「問題作」であるこの楽曲のCDは、先頃タワーレコードから国内盤として復刻した。…

フランケル≪吸血狼男≫≪ザ・プリズナー≫

8つの交響曲や5つの弦楽四重奏曲など「シリアスな」音楽を数多く書いたイギリスの作曲家、ベンジャミン・フランケル(Benjamin Frankel、1906 - 1973)は、『バルジ大作戦』(Battle of the Bulge)*1を始めとする映画音楽の分野でも大活躍をした。 その中で…

黛敏郎≪涅槃交響曲≫

黛敏郎:涅槃交響曲アーティスト:岩城宏之,東京混声合唱団発売日: 2002/06/21メディア: CD 黛敏郎(1929-1997)の≪涅槃交響曲≫(Nirvana Symphony for male chorus and orchestra、1958年)を聴いた。今ならこの傑作も《クレスト1000》シリーズで1050円という…

”ブーレーズってこんなものだよ” by カミングス?

ピエール・ブーレーズの≪カミングスは詩人である≫(cummings ist der Dichter、1970)を聴いた。自作自演……そう、ピエール・ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポランの演奏だ。ブーレーズ:作品集 (Boulez: Pli selon pli, Le visage nuptial, No…

水曜日。シュトックハウゼン≪ヘリコプター≫

水曜日には水曜日の音楽を。というわけで、カールハインツ・シュトックハウゼン(Karlheinz Stockhausen、b.1928)のオペラ≪光≫(Licht/Light)の「水曜日」より、あ・の・名・高・い≪ヘリコプター弦楽四重奏曲≫(Helikopter-Streichquartett、1992-1993)…

”メランコリー” パスカル・デュサパン

ソルボンヌ大学(パリ大学)で美学や哲学、(自然)科学(science)を学んだという──高等専門教育がモノを言うフランスでは異色の──作曲家パスカル・デュサパン(Pascal Dusapin、1955年生まれ)。数々の賞を受賞し、多くの団体から委嘱を受けるなど*1、その…

”Re-performance” 再創造されるグールドの『ゴールドベルク変奏曲』1955年盤

グールドは不可能ななにかを探求していた。それを彼は<ゴールドベルク変奏曲>に即して音楽の「非実体化」と呼んでいる。 ミシェル・シュネデール『グレン・グールド 孤独のアリア』(千葉文夫 訳、筑摩書房) p.145 1955年6月、ニューヨークのCBSスタジオ…

ラウタヴァーラ『運命の物語』

N響アワーの「北欧音楽の魅力」を観ていたのだが、ウラディーミル・アシュケナージ指揮による、 ラウタヴァーラ/"Book of Vision"から「運命の物語」 は魅力的な曲だった。一度聴いただけで魅了される「現代音楽」は、ラウタヴァーラならでは、だ。 また、…

ハンス・ヘニー・ヤーンとハンス・ユルゲン・フォン・ボーゼ

temjinusさんのところでドイツの作家ハンス・ヘニー・ヤーン(Hans Henny Jahnn、1894 - 1959)が話題になっていて(『木造船』以外の全てのフランス語版ハンス・ヘニー・ヤーン全集を買った日本人!のエピソード)、そういえば僕も『十三の無気味な物語』読…

アンリ・プスール『Dichterlibesreigentraum』

『NHK音楽祭2006ハイライト』を観ているのだが、Yahoo!テレビの紹介には、 モーツァルト生誕250年の今年は「体感!モーツァルト」をテーマに、モーツァルトを中心としたプログラムで世界の一流指揮者たちによる華麗な競演が繰り広げられた。音楽祭の演奏ハイ…

スティーヴ・ライヒ、高松宮殿下記念世界文化賞受賞

《ドラミング》、《ピアノ・フェイズ》、《マレット楽器、オルガン、声のための音楽》、《18人の音楽家のための音楽》などで知られるミニマル・ミュージックの旗手、スティーヴ・ライヒ(Steve Reich、b.1936)が、高松宮殿下記念世界文化賞(Praemium Imp…

組曲《惑星》からも冥王星除外か

せっかくサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が「冥王星付き」《惑星》をリリースしたのに……。ホルスト:惑星(冥王星付き)アーティスト:ラトル(サイモン),ベルリン放送合唱団発売日: 2006/08/23メディア: CD 冥王星外し、惑星数8に 国際…

トリスタン・ミュライユ『空間の流れ』

サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団によるオリヴィエ・メシアン『トゥーランガリラ交響曲』を聴きながら、この演奏も凄くいいな、と思った。高音部の煌きはサロネン盤を凌ぐだろう。ギラギラした金属的な響きの中に、オンド・マルトノがヒューと火…

オールソップの武満徹

マリン・オールソップ指揮&ボーンマス交響楽団による武満徹作品集が、ナクソスから出た。『日本作曲家選輯』の一枚で、もちろん片山杜秀氏の博覧強記の解説あり。音楽を聴いて、そしてテクストを読むべし。Flock Descends Into Pentagonal発売日: 2006/07/2…

ジェルジ・リゲティ死去

オーケストラが九十あまりのパートに細分されて蠢いていくリゲティの《アトモスフェール》を楽しむときには、空に浮んだ雲が形や色をかえていくのを眺めている感覚を思い出す。ゆっくりと、でも確実に膨らんだり平べったり変化して、陽が落ちるこりにはほん…

intoxicate の特集は武満徹

タワーレコードのフリーペーパー『intoxicate』(イントキシケイト)の最新号 FEBRURY 2006 VOL.60 は、特集 武満徹 没後10年「妖精と距離」。内容は、 [対談] 武満眞樹&鯉沼鳥利成[鼎談] 水谷浩章×中島ノブユキ×鈴木大介[inter-view] デイヴィッド・シルヴ…

私的ブログとコントラバス

以前コントラバス関係のエントリーを書いたとき、他にも触れておきたい話題があった。コントラバス奏者で作曲家でもあるエドガー・メイヤー(Edgar Meyer、b 1960)についてである。 しかし、エドガー・メイヤーについて「触れておきたいと(そのとき)思っ…

伊福部昭の死

歴史と機能を全く異にする楽器を組み合わせることには、多くの問題がありますが、インドに於けるシタール、スペインのギター等のコンチェルトを思う時、日本の箏に対して、何か責務のようなものさえ感じたのでした。 伊福部昭 (『二十絃箏とオーケストラのた…

トイ・ピアノの世界へ  アート・オブ・トイ・ピアノ

トイ・ピアノ(toy piano)というのは、おもちゃのピアノ、もしくは「卓上ピアノ」のことだ。スヌーピーに登場するシュローダー(Schroeder)が──人の話も聞かないで──熱心に一心不乱に弾いていたのも、その一つ。 所詮、玩具……というなかれ。ニューヨーカー誌…

どうやって動いているのかを知らないこと、どう使うのかを知らないこと

ジャック・デリダとベルナール・スティグレールによる『テレビのエコーグラフィー』(NTT出版)に面白いことが書いてあったのでメモしておきたい。デリダとスティグレールの対談部分。デリダが「諸テクノロジー」や「テレーテクノサイエンス」について、一般…

狼はただ一匹か数匹か?

七匹の狼とは仔山羊たちのことにほかならず、狼が六匹ならばそれは七匹目の仔山羊(つまり<狼男>自身)が大時計の中に隠れているからだし、狼が五匹なら、それは彼が両親がセックスをするのを見たのがたぶん五時だから、そしてローマ数字のⅤが女性の両足の…

管弦楽のための協奏曲

さっき『N響アワー』でやっていた、三善晃の<管弦楽のための協奏曲>は──1楽章と3楽章だけだったが──素晴らしい曲だった。とくにピアノの、オーケストラの音色とは明らかに異質な響きが、印象的だった。初めて聴いた現代音楽なのだけれど、その音色とリズム…

大澤壽人『神風協奏曲』

Piano Concerto 3 / Symphony 3発売日: 2005/03/22メディア: CD「戦後」、日本には、武満徹や黛敏郎をはじめとする多彩な「前衛音楽」の作曲家が存在していることは、誰でも知っている。 ただ前衛、または現代音楽というシロモノ。メシアンやらブーレーズや…

クラブ音楽好きな人には、メシアンとかライヒとかストラビンスキー

オリヴィエ・メシアン、スティーヴ・ライヒ、ストラヴィンスキー!!! という「現代音楽」がさらりと登場する「石田衣良インタビュー」が面白い。石田衣良インタビュー「池袋ウエストゲートパーク」という音楽 [エキサイト・ブックス] ラヴェルとか僕はスイ…

ガンサー・シュラーが解説を書いていた!

先日も書いたように、ここのところアナログレコードの「アウラ」を楽しんでいる。「アウラ」と書いたのは他でもない。回転するドーナツ盤を眺めながら、アナログサウンドに耽っていたら、突然、かつてよく行った「名曲喫茶」のことが思い出されたからだ。 例…

中抜きのアーメン

クラシック音楽ファンならば、片山杜秀の現代音楽に関する博覧強記ぶりは、言わずと知れたものだろう。どんな未知の──マニアックな──音楽を探し出してくるのか、いつも楽しみにしている。 そして片山杜秀は日本思想史の研究者でもある。だからというわけでは…

キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!! タケミツ本

小沼純一『武満徹 その音楽地図』(PHP新書、ISBN:4569642136)。 というわけで、現在読書中。いやー、新書で手軽に現代音楽、しかも武満徹についての本が読めるなんて(しかもPHPからなんて)。 義務教育で教わる音楽の三要素、リズム、メロディ、ハーモニ…