HODGE'S PARROT

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その曲は、アラン・ギリスのピアノソナタ「マルク・ラフォレに捧ぐ」だった

何十年も解けなかった問題が、ふいに解けた。しかもあっけなく。ずっと以前から気になっていた、僕が10代の頃にテレビで見たフランスのピアニスト、マルク・ラフォレが弾いた現代音楽風のピアノ曲が何だったのかをようやく突き止めることができたのも、そんな感じだった。「ずっと解けなかった問題」の「解答」が突然、向こうからやってきたみたいだった。

 

順を追って話そう。

ロン=ティボー国際コンクールのピアノ部門で亀井聖矢さんが優勝した。Twitterクラシック音楽が好きな人を多くフォローしているので、タイムラインには、その話題が自然と流れてくる。興味を惹いたのは本選で亀井さんが弾いた曲がサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番《エジプト風》だったことだ。ピアノコンクールでは、例えばショパン・コンクールではショパンのピアノ協奏曲第1、第2番が弾かれることは誰でも知っている。その他の著名な国際コンクールでは、チャイコフスキーラフマニノフプロコフィエフが定番、その次によく弾かれるのが、リスト、シューマンブラームスベートーヴェンモーツァルトあたりだろう。たまに現役の作曲家に依頼した新作がその年のそのコンクール一回限りで演奏されるのこともある。それほど著名なコンクールでではないが「グリーグ国際ピアノコンクール」では、グリーグの著名なピアノ協奏曲イ短調が課題曲であることは確実に予測できる。

 

でも、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番は意外だった。というか、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番は普段まったく聴いていなくて、最初、亀井さんの動画を見て、とまどった。この曲って何?……。僕の知らない曲(曲調から新作の現代音楽ではない)がコンクールの本選で弾かれるのって……ちょっと……。

 

ちなみにサン=サーンスピアノ協奏曲第2番、第4番は高校生のときにフランソワ=ルネ・デュシャーブルが弾いたレコードを聴いて以来、両曲ともお気に入りの曲で、とくに第2番は真剣に練習してオーケストラをバックに弾いてみたいと思ったこともある(学生オケに所属していたので、合宿などで「初見大会」という団員が任意に持ち寄った楽譜の曲を弾く催しがあった)。

 

もちろんサン=サーンスのピアノ協奏曲第1番、第3番、第5番もパルカル・ロジェやジャン=フィリップ・コラールの録音で少なくとも1回以上は聴いているはずだが、そのときは、それほど心動かされなかったのか、チャイコフスキーピアノ協奏曲第2番みたいな著名な作曲家のマイナーな楽曲扱いで、曲の存在(誰の曲、なんていう曲)は知っているが「どういう曲なのか」を頭の中でイメージできないものだった。

 

だから、「誰の曲、なんていう曲」なのかを突き止めるために、今回のロン=ティボー・コンクール関係のニュース記事を幾つか読んだ。本選の曲がサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番であることはすぐにわかった。ついでに、そう、ついでに、それらの記事を読む中で審査員の一人がマルク・ラフォレであったことを知った。マルク・ラフォレと言えば、

 

このマルク・ラフォレが弾いた現代音楽風のピアノ曲のことがずっと気になっていた。

「どういう曲なのか」は頭の中で音が鳴り、音楽が再現されるのでイメージできる。だが、「誰の曲、なんていう曲」なのかはわからなかった。もちろん、これまで何回か Google で検索したことがあるが「あの楽曲」は突き止められなかった。今回は「あの楽曲」の正体を調べるために Twitter で検索したのではなく、そういえばマルク・ラフォレの近況はどうなっているんだろう、と軽い気持ちで、そう、ほんの軽い気持ちで検索欄にマルク・ラフォレの名前を打ち込んだ。

すると、ある人のツイートから「その曲」が流れてきた。僕の頭の中でイメージしている「こういう曲」と完全に完璧に一致した。これだ!

 

すぐに作曲者名を、スペルがわからなかったので日本語で Google 検索をした。この日本語で検索したのが(今から思うと)功を奏した。 GoogleYoutube 動画を上位にランクインさせた(さすが自社優先)。この動画こそが、かつて僕が見たテレビの映像そのものだった。これだ! これだ! まさしくこれだ!

 

その曲は、アラン・ギリスのピアノソナタマルク・ラフォレに捧ぐ」だった。

Alain Guélis : Sonata for Piano (Dedicated to Marc Laforet)