歴史と機能を全く異にする楽器を組み合わせることには、多くの問題がありますが、インドに於けるシタール、スペインのギター等のコンチェルトを思う時、日本の箏に対して、何か責務のようなものさえ感じたのでした。
伊福部昭 (『二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ』(1982)の楽曲解説より、fontec)
作曲家の伊福部昭が、2月8日亡くなった。91歳だった。
<訃報>伊福部昭さん91歳=作曲家 映画「ゴジラ」も作曲 [Excite、毎日新聞]
北海道・釧路生まれ。北海道帝大専門部卒。アイヌ音楽や樺太のギリヤーク民族の音楽を研究、「民族の特異性を経て普遍的な人間性に至る」ことを作曲理念に据え、ほぼ独学で民族色豊かな作品を作り出した。1935(昭和10)年、「日本狂詩曲」でパリのチェレプニン賞に入選。国際的な脚光を浴びた。来日したロシア出身の作曲家、チェレプニンに近代管弦楽法を師事。「土俗的三連画」、「オホツク海」など独自の交響作品を次々に完成させた。
作曲家の伊福部昭氏が死去・「ゴジラ」など手がける [NIKKEI NET]
北海道大学在学中から独学で作曲を学び、「ピアノ組曲」が1938年のベネチア国際現代音楽祭に入選して国際的な評価を確立。民族音楽に根ざし、リズムの繰り返しや打楽器を多用した作風で高い評価を得た。
「ゴジラ」作曲、東京音大元学長の伊福部昭さん死去 [朝日新聞]
幼いころからアイヌの歌や踊りに触れ、卒業後は北海道の林務官などを務めながら、リズムが躍動し土俗的なエネルギーに満ちた作風を確立。「土俗的三連画」「交響譚詩」などのオーケストラ曲、少数民族に題材を求めた声楽曲「ギリヤーク族の古き吟誦歌」などの力作を生み出した。
戦後、東京音楽学校(現東京芸大音楽学部)や東京音楽大学で教え、芥川也寸志、黛敏郎、松村禎三ら多くの優秀な作曲家を育てた。
「寄せ集めの文化では実を結ばない」が持論で、「日本組曲」「交響譚詩(たんし)」「ギリヤーク族の古き吟唱(ぎんしょう)歌」など、雄大で日本やアジアの風土を色濃く感じさせる作風が特徴だった。「サロメ」などのバレエ曲もある。
四七年の「銀嶺の果て」を機に映画音楽でも活躍。中でも、五四年の「ゴジラ」では、律動感と重量感のある曲でゴジラのイメージを見事に表し、その後も同シリーズの多くを担当した。「ビルマの竪琴」「お吟さま」など、作った映画音楽は三百を超すという。ブルーリボン賞音楽賞も二度受賞している。
独学のために国内で認められるのが遅く、十二音技法が広がった戦後は「古い」とされた時期もあったが、九〇年代後半には伊福部作品を見直す動きが起こり、コンサートやCDの発売が相次いだ。黛敏郎、芥川也寸志(ともに故人)ら教え子も多い。著書に「音楽入門」「管弦楽法」。九六年、日本文化デザイン賞大賞を受賞。二〇〇三年、文化功労者に選ばれた。
伊福部昭(Akira Ifukube)の死は、海外でも速報で報じられた。「権威ある」BBC、ニューヨーク・タイムズ、そして海外/外国人のための「怪獣マニア」のサイト「Tokyo Monsters」でも。
Japanese Godzilla composer dies [BBC NEWS]
Japanese musician Akira Ifukube, who composed the music to the Godzilla films, has died at the age of 91.
He wrote the theme to the original 1954 Godzilla movie, known in Japan in Gojira, which was used in a number of films about the sci-fi creature.
He received a Person of Cultural Merit award in 2003, considered one of Japan's highest honours.
Akira Ifukube Is Dead at 91; Composed Score for 'Godzilla' [NY Times]
Mr. Ifukube began to build an international reputation in 1935, when his "Japanese Rhapsody" won first prize in a contest promoted by the Russian-born composer Alexander Nikolayevich Tcherepnin.
He was most famous for writing the main theme for the first "Godzilla" film, released in 1954. That piece used his characteristic repetition of musical phrases to create a dynamic rhythmic score with a tribal feel.
Since then, 27 more Godzilla movies have been produced in Japan, with Mr. Ifukube's score occasionally reappearing.
Mr. Ifukube left the forest after World War II to become a music instructor. His first stint was between 1946 and 1953 at a school that later became the Tokyo National University of Fine Arts and Music.
His work regained popularity in Japan in the late 1990's with the release of new CD's of his work played by younger musicians.
Akira Ifukube: 1914-2006 [TokyoMonsters.com]
Thank you again to Bob for sharing this sad news. Our thoughts are with Mr. Ifukube's friends and family.
朝日新聞夕刊(2006年2月10日)には、音楽評論家の片山杜秀氏による追悼記事が掲載された。
戦後、音楽は様変わりした。インターナショナルで前衛的な響きが、作曲の王道だとされた。だが、伊福部は従わなかった。音楽は人間の生命力を表すべきで、それは人間の生きる風土を抜きにしては語れない。「音楽にインターナショナルはない」というのが口癖だった。作風を変えずに、アイヌの舞踊に霊感を得た「タプカーラ組曲」(54年)などを書き続けた。彼は、長く反時代的存在として扱われた。
(中略)
晩年はグローバリズムという言葉の流行に危機感を抱いていた。伊福部の北の大地に根ざした多民族的な音楽は、今こそ見直されるべきだろう。
[関連サイト]
また、木走日記「ゴジラが皇居を襲わなかった本当の理由〜何もわかっちゃいない産経コラム」では、伊福部昭とゴジラに関連して──「特撮マニア」として──とても重要な指摘をされています。
- アーティスト:ロシア・フィルハーモニー管弦楽団
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: CD
- アーティスト:新日本フィルハーモニー交響楽団
- 発売日: 1995/12/25
- メディア: CD
- アーティスト:(クラシック)
- 発売日: 2000/07/01
- メディア: CD
- アーティスト:サントラ
- 発売日: 2000/12/06
- メディア: CD
- 作者:木部 与巴仁
- 発売日: 1997/05/01
- メディア: ハードカバー
- 作者:小林 淳
- メディア: 単行本
「コジラのテーマ」が挿入される『伊福部昭 ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲』を始め、いくつかの楽譜/スコアが全音楽譜出版社から出ている。『リトミカ・オスティナータ』はピアノ連弾版なので、腕に自身のあるピアノ弾きはトライしてみるといいだろう。
伊福部昭 ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲 (Violin library)
- 作者:伊福部昭
- 発売日: 2001/05/21
- メディア: 楽譜
伊福部昭 ピアノ組曲 (Zenーon piano library)
- 作者:伊福部昭
- 発売日: 1998/12/10
- メディア: 楽譜
伊福部昭 リトミカオスティナータ ピアノとオーケストラのための(ピアノリダクション版) (Zenーon piano library)
- 作者:伊福部 昭
- 発売日: 2002/05/22
- メディア: 楽譜