HODGE'S PARROT

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book

ホアン・マシア『解放の神学』より

ホアン・マシア著『解放の神学 信仰と政治の十字路』を読んでいる。ホアン・マシア神父(カトリック・イエズス会)に関しては、先日、『群青』さんのブログの記事で知った──その言葉に非常な興味を覚えた。 ホアン・マシアさんも、カトリックの現状について…

マルクス主義とキリスト教徒の「収斂」

平行してフィリップ・ベリマン著『解放の神学とラテンアメリカ』を読んでいる。フィリップ・ベリマン(Phillip Berryman、b.1938)は1965年から1973年までパナマ市のスラム街で司祭を務めていた人物だ。その第9章では「マルクス主義の利用」と題され、マルク…

武満徹の演出の波紋

メンデルスゾーンの音楽を聴いていたら──《宗教改革/Reformation》と呼ばれる交響曲第5番ニ長調 Op.107 をクラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団の演奏で聴いていたら──ふと、ハーバート・クッファーバーグ著『三代のユダヤ人 メンデルスゾーン家の人々…

ブライヅヘッドのABC

映画『Brideshead Revisited』英国プレミア上映、出演者ら出席 [AFP] それにしても、日本では、いつになったらこのイヴリン・ウォーの小説『ブライヅヘッドふたたび』の映画化作品──チャールズ役がマシュー・グード、セバスチャン役がベン・ウィショー──を観…

クリスチアン・ニュルンベルガー『17歳からの聖書の読み方』

17歳からの聖書の読み方作者: クリスチアンニュルンベルガー出版社/メーカー: 主婦の友社発売日: 2007/12/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (11件) を見る 著者はドイツのジャーナリスト。この本は『聖書──本当に知っていなければいけ…

「ラチュウミア聴こっ!」を読もっ!

フランスのピアニストで現代音楽を得意としているウィレム・ラチュウミア/Wilhem Latchoumia について書いたエントリーに、NOBOBON さんという方がコメントをしてくださった──NOBOBON さん、ありがとうございます。Piano & Electronic Soundsアーティスト:L…

「シューマンを聴きながら」2

再び、フェルナン・クノップフ(Fernand Khnopff、1858-1921)の絵画『シューマンを聴きながら』を見つめながら、シューマンの音楽を聴きたくなった。 En écoutant du Schumann/listening to Schumann *1 音楽的人間は鳥の中で脱領土化する。そのとき鳥それ…

ゲンリヒ・ネイガウスの『クライスレリアーナ』とサマセット・モームの『サミング・アップ』

DENON の「ロシア・ピアニズム名盤選-14」*1は、ゲンリヒ・ネイガウス(Heinrich Neuhaus/Genrich Gustawowitsch Neigaus、1888 - 1964)によるロベルト・シューマンの『クライスレリアーナ』とフランツ・リストのピアノ協奏曲第2番が収録されている。素晴…

MI5、ゲイの情報員を「公式に」募集

そういえば、『アシェンデン 英国秘密情報部員の手記』(Ashenden: Or the British Agent、1928)を書いたサマセット・モームは、実際にイギリス情報局秘密情報部/Secret Intelligence Service (SIS、MI6)の諜報部員としての体験を有していたのだった。 …

小説家・中村真一郎

読むたびに新しい発見がある──なんて言い草は、ちょっと気恥ずかしいのだが、やはりヘンリー・ジェイムズの心理描写は「凄い」の一言だし、その小説はまさに「アート」としか言いようがない。ジェイムズの小説こそ、究極の芸術である。 で、ジェイムズの本を…

ヘンリー・ジェイムズ『エドマンド・オーム卿』

『ねじの回転』では、本当に幽霊が出現したのか、それとも家庭教師=話者の妄想なのか、という議論が巻き起こるが、同じく幽霊が出現するヘンリー・ジェイムズの『エドマンド・オーム卿』(Sir Edmund Orme、1892)の場合、幽霊=サー・エドマンド・オームを…

ダビデのごとくピアノを弾くマイルズ

ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』(The Turn of the Screw)を読み返していたら、なるほど、と思わせる記述があった。マイルズが家庭教師を油断させるためにピアノを弾き、その間、フローラが「幽霊」に会いに「行って」しまった──と、家庭教師が思い込…

デミアン・ハーストの《鮫》 〜 生者の心における死の物理的な不可能性

フェルメールの絵画作品が東京都美術館に滞在しているが、ニューヨークのメトロポリタン美術館では、イギリスの現代アーティスト、デミアン・ハースト(Damien Hirst、b.1965)による鮫のホルマリン漬け《The Physical Impossibility of Death in the Mind o…

ジェイ・ジョプリングとホワイト・キューブ

10年前の雑誌『ブルータス』(1998年5/15号)は「クール・ブリタニア」特集だった。もちろん、そこには、デミアン・ハーストも登場している。で、その『ブルータス』の記事で眼を惹いたのが、デミアン・ハーストを「プロデュース」した男、ジェイ・ジョプリ…

FLAUBERT'S PARROT

Talking Parrot http://jp.youtube.com/watch?v=lSDFzg8_Wfg:Movie 鸚鵡もともと鸚鵡というのは人間だったのである。つまり、語源がそうだということだ。すなわち、フランス語の「ペロケ」(鸚鵡)は人の名前「ピエロ」を変形させた愛称であり、英語の「パロ…

新しい愛と音の世界へ 〜 マティアス・ピンチャー

サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による冥王星付き《惑星》に付録されていた《オシリスに向かって》(towards Osiris)が、そのアルバムの中でもとりわけ印象的だった、ドイツの作曲家&指揮者マティアス・ピンチャー(Matthias Pint…

オペラ《アメリカの悲劇》

ウォルト・ホイットマンの詩を用いたジョン・アダムズ作曲の《包帯を巻くのがわたしのつとめ(包帯係)》は、感動的な音楽で、ここのところ何度となく繰り返し聴いている。 そして、そのCDで素晴らしい歌唱を聴かせてくれているバリトンのネイサン・ガン(…

映画『ブライヅヘッドふたたび』

イヴリン・ウォーの小説『ブライヅヘッドふたたび』(Brideshead Revisited 、1945)を原作にした映画がついに完成、アメリカで公開された。ジュリアン・ジャロルド/Julian Jarrold 監督、マシュー・グッド/Matthew Goode(チャールズ・ライダー)、ベン・…

《包帯を巻くのがわたしのつとめ》 ジョン・アダムズ

John Adams: Shaker Loopsアーティスト:John Adams,Nathan Gunn発売日: 2004/10/19メディア: CD オペラ《中国のニクソン》*1や《クリングホファーの死》*2で有名な──同時に、物議をかもしている──アメリカの作曲家ジョン・アダムズ(John Adams、b.1947)。…

”えすぺれ・ぱんた・ぺろーん” サッポーの歌

ドイツの作曲家ハンス=ユルゲン・フォン・ボーゼ(Hans-Jürgen von Bose、b.1953)の『サッフォーの歌』(Sappho-Gesänge、Songs of Sappho、1983年)を聴いた。Bose:the Night from Bleiアーティスト:Bose発売日: 1993/04/01メディア: CD 『サッフォーの歌…

人を苦しめるメタファー

或る現象を癌と名附けるのは、暴力の行使を誘うにも等しい。政治の議論に癌を持ちだすのは宿命論を助長し、「強硬」手段の採択を促すようなものである──それに、この病気は必ず死に到るとの俗説をさらに根強くしたりもする。病気の概念がまったく無害という…

『アウシュヴィッツ後の反ユダヤ主義』より

ヤン T.グロス著『アウシュヴィッツ後の反ユダヤ主義 ポーランドにおける虐殺事件を糾明する』(原題『Fear: Anti-Semitism in Poland After Auschwitz』)*1を読み始めた。アウシュヴィッツ後の反ユダヤ主義―ポーランドにおける虐殺事件を糾明する作者:ヤン…

ジョン・ル・カレ『リトル・ドラマー・ガール』

イスラエル人に会ったことはあるかね」クルツ*1がきいた。 「自分が知るかぎり、ないはず」 「ユダヤ人全体に、なにか人種的反感を持っていないかな。ユダヤ人がユダヤ人であることにたいしてだ。われわれはいやなにおいがしないかね、テーブル・マナーがい…

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』映画化へ

『ガーディアン』によれば、ジョン・ル・カレのスパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』が映画化へ向けて準備中だという。Tinker, tailor, soldier, film star [Guardian] John le Carré's hit thriller Tinker, Tailor, Soldier, Spy is to…

ラリー・スピークスの”ビート・ザ・プレス” 

元大統領報道官スコット・マクレランの回顧録が、保守、リベラルブロガーたちの恰好の話題となり、熾烈な舌戦を繰り広げているようだ。 Conservatives Try To Smear McClellan By Calling Him A ‘Left-Wing Hater’ Reciting ‘Blogworld Talking Points [Thin…

スコット・マクレランが回顧録を出版

2003年から2006年までホワイトハウスの報道官を務めたスコット・マクレラン(Scott McClellan)。さわやかな弁舌と記者との受け答えが見事で、なかなか魅力的な人物だった。その彼が回顧録『What Happened: Inside the Bush White House and Washington's Cu…

カネッティの「すべてを学ぶこと」

保守主義者で反革命家のジョゼフ・ド・メーストルについて触れたとき、バーリン以外にも、誰かがそのフランスのカトリック思想家のことを「好きだ」と書いていたな、と思って気になっていたのだが、思い出した。エリアス・カネッティ(Elias Canetti、1905 -…

社会は社会の原因である

先日のエントリー「バッハとバーリン」で啓蒙主義と自然法について、どちらかというと批判的な文章を紹介したが、ベルナール=アンリ・レヴィも興味深い指摘をしている。メモしておきたい。 自然状態というものはなく、自然というものは存在しない、そして、…

ライナー・シュールマン

ある「過激な」映画を観て、そこでパロディ化されている(サブカルチャーとしての)「左翼文化」──主にイタリア、ドイツ(西ドイツ)を中心としたユーロ・ラディカリズム──について参考になるものがないかな、と『現代思想』をパラパラとめくっていた。 当然…

バッハとバーリン

大村恵美子の『バッハの音楽的宇宙』を読んでいる。ヨハン・セバスティアン・バッハのカンタータを中心とした宗教音楽について書かれたもので、楽曲の解説とともに、その背景となる宗教、政治、社会、歴史についても興味深い指摘がなされている。 その第三章…