フィンランドの作曲家カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho、b.1952)のオラトリオ《シモーヌの受難》(La Passion de Simone、2006)が、今年2008年の8月にアメリカで初演された。《La Passion de Simone》は、フランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユ(Simone Weil、1909 - 1943)の生涯を音楽化したものだ。
『レコード芸術』2008年10月号にも記事が載っていた。それによると、レバノン出身のアミン・マアルーフ/[http://en.wikipedia.org/wiki/Amin_Maalouf:title=Amin Maalouf] *1 のテクストに基づき、ピーター・セラーズ/Peter Sellars が演出したもので、唯一のソリスト──すなわち現代のナレーターとして、そしてシモーヌの化身として、ソプラノのドーン・アップショウ/ Dawn Upshaw が「語り」、そして彼女にマイケル・シューマッハ/Michael Schumacher のダンスが絡む。
神の不在は、完全な愛を何よりもみごとに証拠立てている。だからこそ、純粋な必然、善とはあきらかにことなった必然は、こんなにも美しいのである。
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』(田辺保 訳、ちくま学芸文庫) p.177 *2
↓ は2006年のウィーン初演のときの『ニューヨーク・タイムズ』の記事より。
円と直線との接点(タンジェント)。それは高次の秩序が低次の秩序の中に、無限に小さいものとなって姿をあらわしているということである。
キリストは、人類と神との接点である。
『重力と恩寵』 p.278
[Kaija Saariaho]
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*1:アミン・マアルーフについては『サマルカンド年代記―『ルバイヤート』秘本を求めて』と『アラブが見た十字軍』、『レオ・アフリカヌスの生涯―地中海世界の偉大な旅人』が邦訳されているようだ。 サマルカンド年代記―『ルバイヤート』秘本を求めて (ちくま学芸文庫) レオ・アフリカヌスの生涯―地中海世界の偉大な旅人 (冒険の世界史)
*2: 重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)