HODGE'S PARROT

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ジョン・チェンのデュティユー



まだご存命だと思うけど、フランスの作曲家アンリ・デュティユー(Henri Dutilleux、b.1916)の「ピアノ独奏曲全集」が NAXOS から出た。快挙である。
演奏は、ジョン・チェン(John Chen)という1986年にマレーシアで生まれニュージーランドで育ったピアニスト。2004年のシドニー国際ピアノコンクールの優勝者だ。

Complete Solo Piano Music

Complete Solo Piano Music

  • 発売日: 2007/01/30
  • メディア: CD


さすがコンクールの覇者。デュティユー作品の中でも、わりと良く演奏されるピアノソナタは難曲としても知られているが、ジョン・チェンのテクニックは申し分ない。録音のせいもあるかもしれないが、例えばオグドン盤の比べても、タッチは明快で、スマートでスムーズ。それに曲自体もいいな、と改めて思った。
フランス系のピアノソナタって他にヴァンサン・ダンディとポール・デュカス、「現代音楽バリバリの」ピエール・ブーレーズの作品ぐらいしかすぐには思い浮かばないのだが、その中でも、デュティユーの作品は、気品ある美しさと見事な演奏効果で際立っている。1946年から1948年にかけて作曲されたこの曲は、周知のようにブーレーズの第2ソナタと同時期のものであるが、それを演奏するのに「燕尾服の礼装」であろうが、ジーンズにTシャツであろうが、一向に構わない。多くのピアニストや音楽ファンを魅了してやまないのは一聴してわかる。ブーレーズソナタは弾こうなんてぜんぜん思わないけど、デュティユーの曲は苦労してでも弾けるようになりたいと思う。

ソナタ以外では『3つの前奏曲』(1973-1988)が良かった。とくに≪影と沈黙から≫は、印象派風の、斬新な響きを聴くことができる。1946年の作曲された『波のまにまに』は、もともとラジオ・フランスの番組と番組の「間奏」(interlude)として作曲されたもので(なんて贅沢なんだ!)、シンプルながらも、魅力的な音楽に仕上がっている。