HODGE'S PARROT

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「なるほど、権利が切れるというのは、こういうことなのか」



僕もショップでナクソス盤のグレン・グールドゴルトベルク変奏曲』を見かけて「おぉ」と思ったので、飯尾洋一氏のコラム「ネットエイジのクラシックジャンキー」を興味深く読んだ。


あの名盤から50年。権利が切れるということは [日経パソコンオンライン]

著作権著作隣接権はよく混同される。前述の録音で言えば作曲家のバッハに帰属するのが著作権。バッハは18世紀に没しているので、著作権はとっくに切れている。これに対して実演家(この場合ならグールド)やレコード制作者(ソニーBMG)が持つのが著作隣接権。日本国内では、レコードの場合は原則として「発行した年の翌年から50年後まで」が保護期間とされる。


そう、僕も長らく「グレン・グールドコロムビアソニーのアーティスト」という図式に慣れ親しんでいた。だから他レーベルによる同一録音の出現は、とても新鮮な光景だった。

Goldberg Variations (1955)

Goldberg Variations (1955)

でもグールドにまで「手が届いた」ということは、なにか世界が変わったという実感がある。


(中略)



たまたまインターネットによる音楽配信の広がりとステレオ録音の著作隣接権の消滅のタイミングがうまく合致してくれたおかげで、わたしたちはクラシックの黄金時代を「権利切れ」という形によって50年遅れで追体験できることになりそうだ。




ネットエイジのクラシックジャンキー





それとレコードじゃないけど……モーリス・ラヴェルの楽譜も「日本では」長いことデュラン社/DURAND S.A. のものでしか手に入らなくて、それが全音楽譜出版社から出たときも「新鮮な光景」だった。あの「見慣れた」黄色いカヴァーとフランス語表記だけではなく、値段がずいぶんと安くて……ショックだった(笑)。

またラヴェルが1937年に死去した後、著作権の関係で、50年及び戦時加算の10年で合計60年間、つまり1937年から約60年後の1997年頃までラヴェルの楽譜は非常に高価であった(一例として1991年当時の日本円価格で輸入版の『水の戯れ』一曲の楽譜が2,800円を要した)。著作権が消滅し、ラヴェルの楽譜の価格が非常に安くなったとき、楽譜の編集者達は曲についての細かい確認作業をする際、ペルルミュテールの演奏を参考にした。音楽の友社から出版されているラヴェルピアノ曲集に至っては、ペルルミューテル自身が校訂したものを採用している。




ウィキペディア「ヴラド・ペルルミュテール」より


「戦時加算」とは、ウィキペディアによれば、「日本などの枢軸国諸国における著作物利用の制限で、第二次世界大戦中の連合国(米英など)及び連合国民の有する著作物の著作権の存続期間について、著作権法に法定された通常の期間に加えて、開戦から講和までの約10年間延長されること」だ。

日本は第二次世界大戦中は戦争相手国である連合国の国民の著作権を保護しなかったペナルティーとして、戦争中に存在した連合国の国民の著作権について、通常の保護期間に戦争期間を加算しなければならない。


但し、対象となるのは平和条約を批准した45の国全てではなく発効時にベルヌ条約に加盟していた国または日本と交戦状態となる前に個別の条約ないし協定を日本と締結していた15か国に限られる。




戦時加算 (著作権法)


関連→ラフマニノフの著作権が消滅[山崎潤一郎のネットで流行るものII]



Maurice Ravel - Collected Songs

Maurice Ravel - Collected Songs




楽譜(スコア)に関してはアメリカの Dover 社の存在も新鮮だった。廉価であるだけではなく、カヴァーが洒落ていて。例えばラヴェル関連だと『ダフニスとクロエ/Daphnis et Chloe』のフル・オーケストラ版スコア。2000円ちょっとで買えてしかもこのデザインなのだから。

Daphnis and Chloe: Suites I and II in Full Score (Dover Music Scores)

Daphnis and Chloe: Suites I and II in Full Score (Dover Music Scores)




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