HODGE'S PARROT

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駄目PV100選8 Aztec Camera ”グッド・モーニング、英国”



僕がイギリス贔屓だってのは内緒だけど、Aztec Camera(アズテック・カメラ)の≪Good morning Britain≫は取り上げておきたい。アルバム『Stray』(1989)に収録され、Roddy Frameロディ・フレイム)とThe Clashザ・クラッシュ)のMick Jones(ミック・ジョーンズ)のデュエットも話題になった。


Good morning Britain



ネオアコな」音楽に乗って、サッチャー首相からバッキンガム宮殿の衛兵、タワー・ブリッジ、ビッグ・ベンスコットランド産タータン・チェックのキルト、パブ、サッカー、パンク少年、貴族&上流階級の乗馬&ポロ競技、労働者の暴動、薄汚れた工業地帯(グラスゴー?、公害?)、陰気なヒースの丘、頑固そうなブルドッグ……そして大英帝国のユニオン・ジャック、とイギリスの名物風物がこれでもかと映し出されていく。
英国観光協会も泣いて喜ぶだろう。

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫) 「……あなたはきっと成功するでしょう。当地(イギリス)ではアメリカ女性は大歓迎だから。とてもよくしてくれますよ。でもイギリスで落着きすぎてはいけません。いいですか?」
「ええ、イギリスに満足することはないと思いますわ。国は気に入りましたけれど、イギリス人が好きかどうか確信がもてないのです」
「イギリス人というものはいい人たちですよ。とくにこちらが好きになればね」
「その通りだと思いますわ。でも交際して愛想がいいのでしょうか? 私のものを盗んだり、私のことをぶったりすることはないでしょうけど、親切にしてくれるでしょうか? 私は人びとにそうしていただきたいのです。そういう好意をとても嬉しく思うので、敢えてそう申すのです。イギリス人は若い娘に愛想がよくないと思います──少なくとも小説に描かれているところではそうです」
「私は小説のことは知らないが」とタチェット氏は言った。「小説にもいろいろ長所があると思うけれど、非常に正確というわけにはいかないようだ。以前ある女流小説家がここに泊まったことがあってね。ラルフの友人で、彼が招待したのさ。とても意欲的な人で何でもやってみるほうだったね。でも仕事ぶりについて信用できる人ではなかった。想像が自由奔放すぎるというのかな。後で小説を発表し、その中でこの私の姿を──いわば戯画化といったもののようだったが──とにかく描いたということだった。私はその本を読まなかったが、ラルフが必要な箇所に印をつけて私に読ませた。私の喋り方を再現しているという話だった。つまり、アメリカ人特有の癖、鼻にかかった発音、ヤンキー的な考えかた、星条旗礼賛などが描いてあるというのさ。
ところが読んでみると、まったく見当外れだった。




ヘンリー・ジェイムズ『ある婦人の肖像(上)』(行方昭夫 訳、岩波文庫) p.102-103


Stray

Stray



個人的には、Aztec Camera と言えば、まずは≪Still On Fire≫かな。アコースティックな響きは新鮮で、ちょっとセンチな映像もいい。セカンドアルバム『Knife』(1984)に収録。

Aztec Camera - Still On Fire



Knife

Knife



そして『Love』(1987) 収録の≪Somewhere in My Heart≫。これがベストソングだ。

Aztec Camera - Somewhere In My Heart - Live 1988


Love

Love



イギリス人って、因襲的なのでしょうね」と彼女は言った。
「そう、何にでも伝統に従ってするようだね。あらかじめ決めておいて、最後の瞬間まで曖昧にしておくことはない」
「私はあらかじめ決めてしまうのはいやですわ。思いがけないことのほうが好きです」伯父は姪の好き嫌いが明確であるのを面白く思ったらしい。「でも、あなたが大成功を収めるというのは今から分っている。そういうのは好きでしょう?」
「イギリス人がそんなにばかばかしいほど因襲的だとすると、成功しそうもありません。私は少しも因襲的ではありませんもの。正反対です。ここではそういうのは嫌われるでしょう。
「いや、いや、そうではない。イギリス人が何を好むのかは分らない。あの連中は首尾一貫していないのだから。そこが面白いところには違いないのだが」





ヘンリー・ジェイムズ『ある婦人の肖像』 p.105