HODGE'S PARROT

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NO.1 トカレフ デビュー!



ニコライ・トカレフ(Nikolai Tokarev、1983年生まれ)。そのロシアの拳銃のような名前はこれまで何度となく耳にしたことはあったが、ガキ……というかアイドル的なイメージの売り出し方が「ピアノをナメてる」ような気がしていたので、あまり関心が持てなかった。
が、ソニーからメジャー・デビューを果たし、その短髪に髭という「直球」……いや、ワイルドなカヴァージャケットに、曲もショパンの「葬送ソナタ」を始め、フランツ・リストプロコフィエフの超絶技巧作品が収録されていたので聴いてみた(いちおうミニ写真集付きの「初回生産限定盤」ASIN:B000Q6GW00。やっぱりソニーもアイドル的な売りか) 。


ショパンのピアノ・ソナタ第2番変ロ短調 Op.35「葬送」は、多種多様な競合盤があるし、最近でもサイモン・トルプチェスキの豪快な演奏を聴いたので、それに比べるとトカレフの演奏は大人しく感じる。もちろん技巧は冴えているし、ピアノの音は美しい。第1楽章の繰り返しは「グラーヴェ」も弾くので、ワイルドな風采のわりには「知」で勝負するのかもしれない。
それはそれでOKだ。最近よく演奏されるようになったシロティ編曲によるバッハの前奏曲ロ短調や、シューベルトの『楽興の時』D780 も、リリックな曲想がよく表現されている。リストの『ラ・カンパネッラ』も響きの美しさに重点を置いているようだ。

だけどもう少し殺傷力……いや、ヴィルトゥオジックな「体育会系」の演奏を期待していたんだけどな、このカヴァー写真であるならば、だ。YouTube にあった『剣の舞』は凄かったし……。
と、思っていたら、アレクサンダー・ローゼンブラット(Alexander Rosenblatt、b.1955)の『パガニーニの主題による変奏曲』にはグッときた。あの有名なメロディをジャズ風にアレンジしたもので、華やかな技巧と生き生きしたリズム、そして重低音が聴かせる。すごくカッコいい音楽じゃないか。

そして二枚目。ムソルグスキーイゴール・フレイド編曲『禿山の一夜』ではグリッサンドがまさに弾丸のよう飛び交い、迫力満点。プロコフィエフの『トッカータ』は、トカレフの鋭いコッキングとダイナミックな撃鉄で、この曲のアクロバティックで過酷なまでのアクションをまざまざと見せ付けてくれる。さすがはロシアのトカレフだ。

もう一曲、篠原啓介のForest of the Piano(映画「ピアノの森」メインテーマ ニコライ・トカレフ・バージョン)という作品が入っていたが、初めて聴く曲で、あまりよくわからなかった。



[ニコライ・トカレフ  オフィシャルウェブサイト]