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トルプチェスキの「葬送」ソナタ&スケルツォ



マケドニアスコピエ(Skopje)出身の Simon Trpčeski は、シモン・トルプチェスキなのか、それともサイモン・トルプチェスキと表記するのがいいのか、わからないけれど、2000年のロンドン国際ピアノコンクールで2位、現在は英EMI専属なので、とりあえずサイモンと呼ぶことにしよう。

Piano Sonata No 2 / 4 Scherzi

Piano Sonata No 2 / 4 Scherzi


EMIクラシックスの「EMI Classics’Debut Series」でCDデビューした1979年生まれのサイモン・トルプチェスキの3枚目のアルバムが、このショパン・アルバム。収録曲は、ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調Op.35≪葬送≫とスケルツォ全4曲。

さすが「デビュー・シリーズ」のCDが『Gramophone Awards』を受賞するだけあって、なかなか魅力的な演奏だと思う。例えば葬送ソナタ。グラーヴェの序奏の後、トルプチェスキは、猛突進する。勢いがある。最初からこんなに飛ばして、後で息切れしないのかと、ドキドキさせられる。でも全然平気のようだ。失速しない。繰り返しでは、低音を強調したりする余裕をかまして、心地よく疾駆する──「葬送ソナタ」の第1楽章なのに。
僕の好きな第2楽章でも、大胆に左手低音をアタックし、総じて豊かな音量で、聴きなれた音楽を新鮮なものにしてくれる。華麗なスケルツォだ──あの「葬送ソナタ」の第2楽章なのに。
そして「葬送行進曲」は美しい。弱音が絶妙にコントロールされていて、決して「か細く」ならない。フィナーレも、ここは両手のユニゾンなのに、ペダリングの妙なのか、響きが重層的で、いろいろな「断片」が聴こえてくる。陰鬱さとは無縁の「葬送」だけれども、僕は気に入った。


スケルツォも同様。なんといっても覇気がある。例えば第1番のジグザグした走駆や、第3番の両手のオクターブといった「難所」を快調に飛ばしていく。清々しいと言ったらよいだろうか。第2番の冒頭三連符も全然深刻ぶらない。唯一の長調で「スケルツォ」のもともとの意である「諧謔」や「ジョーク」に相応しい第4番では、メリハリのあるキレのあるタッチでピアノを豪快に鳴らす。躍動感があり、ちょっとしたアゴーギクぶっきらぼうなところも曲調に合っている。
技巧派ピアニストの闊達なパフォーマンスは面白い。「BBC New Generation Artist」にも選出されたサイモン・トルプチェスキは、2004年にはプロムス/The Proms デビューも果たしている。




[Simon Trpceski Official site]

[London International Piano Competition]

[The BBC Proms]

EMIのサイト↓では、ダークスーツにサングラス姿のサイモン・トルプチェスキの画像がある。なかなか洒落者のようだ。

Piano Recital

Piano Recital