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「プラットフォーム・アグノスティック」 テレグラフ編集長は語る



小林恭子の英国メディア・ウオッチ』に、英『デイリー・テレグラフ』編集長ウイリアム・ルイス(William Lewis)のメディア戦略に関する記述があった。保守系と看做される『テレグラフ』であるが、それを牽引するウィリアム・ルイス編集長は、1969年生まれの才気溢れる若手ジャーナリストだ。


「新聞は瀕死状態か?」 英、仏、米の試み [小林恭子の英国メディア・ウオッチ]

 「テレグラフは年老いた人が読むもの、退屈だ、というイメージがあるかもしれないが、そうではない。テレグラフという一つのブランドを広げる、そういう意味でのマルチメディア戦略だと思っている」


 「テレグラフを1つの媒体だと見ている。『プラットフォーム・アグノスティック』という考え方をしている。どんなプラットフォーム、つまりはどんな形でもいい、と。読者がテレグラフをどうやってどこで読んでもいいように、と。(英国で大人気の携帯電話)ブラックベリーで読んでもいいと思う」


 「今までを振り返ると、テレグラフのスタッフは、人々が朝起きて新聞を読むという習慣だけに合わせて新聞を作っていた。一日に一度の機会のために作る、という意味で怠け者だった」

 
 「現在は、読者は王様、と考えている。経営陣も考え方を変えた。読者が何を欲しがっているか。例えば、サイトで提供されている映像クリップには、毎月60万件のダウンロードがある。新聞社にとってはまったく新しい領域だ」


 「編集長への手紙(=読者欄への投稿)もマルチメディア戦略を実行してから2倍に増えた。今は毎日1000通手紙をもらう。その90%は電子メールでくる」


 「もっと読者をデジタルの金脈につれていきたい」


ルイス編集長が言及している「プラットフォーム・アグノスティック」(platform agnostic)は、『ニューヨーク・タイムズ』の編集者(後に会長)であった Arthur Ochs Sulzberger Jr. も唱えていたものだ。ちょうど NY Times がオールドメディア・カンパニーからサイバースペースのメディアとしても変化を遂げたときに。


The Future Of The New York Times [BusinessWeek]

The Sulzbergers who preceded him were newspapermen; Arthur Jr., by his own description, is a "platform-agnostic" multimedia man. In the mid-1990s, NYT Co. became one of the first Old Media companies to move into cyberspace. Times reporters also began experimenting with adapting their newspaper stories to another medium new to them -- television.
Today, NYTimes.com consistently ranks among the 10 most popular Internet news sites, and New York Times Television is one of the largest independent producers of documentary programming in the U. S. "Within our lifetimes, the distribution of news and information is going to shift to broadband," Sulzberger says. "We must enter the broadband world having mastered the three key skill sets -- print, Internet, and video -- because that's what's going to ensure the future of this news organization in the years ahead."

それにしても、由緒あるイギリスの高級紙『デイリー・テレグラフ』編集長ウイリアム・ルイス氏が、「ネットで読んで、後で新聞を買ってくれなくてもいい」とまで発言しているのが印象的だ。



[William Lewis]