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死亡したリトビネンコ元中佐事件の続報



だめな僧正(ビショップ)というのは、味方の歩(ポーン)に邪魔されているものをいう。




レン・デイトン『ベルリンの葬送』(稲葉明雄 訳、ハヤカワ文庫)p.50


連邦保安庁FSB)元中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏の変死関連で、この一週間の「動き」をまとめておきたい。


ガイダル元ロシア第一副首相の体調急変、不明な物質が原因の可能性 [goo ニュース/ロイター]

ロシアのガイダル元第一副首相(50)が訪問先のアイルランドで突然倒れた問題で、元副首相のスポークスマンは30日、ロシアの医師団は原因について自然界の要因を特定できていないと述べた。


 同スポークスマンはロイターに「医師団からの情報では、現時点では中毒症状を引き起こす自然界の要因が特定できていない。これまでのところ、原因は不明な物質で、自然界の有害物質ではないと考えている。これが毒物だったかどうかを判断するには時期尚早だ」と語った。


 元副首相の娘であるマリア・ガイダル氏はラジオで、元副首相の容体はかなり改善したが、依然入院していると述べた。


 元副首相は今週、著書のプロモーションのため訪れていたアイルランドで突然倒れ、同地の病院に収容された後、ロシアに帰国した。


露FSB元幹部殺害 放射性物質 露、政商事務所で検出 ロンドン [Yahoo! ニュース/産経新聞]

ロシア連邦保安局(FSB)の元幹部、アレクサンドル・リトビネンコ氏が放射性物質ポロニウム210によって殺害されたとみられる事件で、ロンドン警視庁は27日、同国に亡命しているロシアの政商ベレゾフスキー氏の事務所から、ポロニウム210の痕跡が検出されたと発表した。


変死事件、ロシア世論は「ベレゾフスキー氏の陰謀」 [読売新聞]

有力紙「イズベスチヤ」がリトビネンコ氏の容体が悪化した後にネットを通じ行った「犯人はだれだと思うか」との調査では、54%が「ベレゾフスキー氏の陰謀」と答え、「ロシア特殊機関の標的になった」との答えは14%だった。ロシア特殊機関の関与を疑う英国の世論とは対照的な受け止め方だ。

 事件について、政府高官や有力政治家らは「リトビネンコ氏を殺害してもクレムリンの利益にならない」「プーチン政権とロシアの信用を落とす政治宣伝」との見方を強調している。


元情報員に自殺説も=ロシア大統領を陥れる狙い−英紙 [Yahoo! ニュース/時事通信]

ロシアの元情報機関員、リトビネンコ氏がロンドンで不審死を遂げた事件で、英紙インディペンデント(電子版)は26日、同氏がプーチン大統領を陥れるため、自殺を図った可能性も含め、警察当局が捜査していると報じた。


リトビネンコ事件:主要登場人物をまとめてみる [暗いニュースリンク]

リトビネンコ氏周辺の人々は、プーチン露大統領を暗殺犯として批判しているが、死に至る過程がこれほど派手に報道された事件を指して暗殺というには少々違和感があると言わざるをえない。それに比べると、今年10月7日に自宅前で射殺体として発見されたロシア女性ジャーナリスト・ポリトコフスカヤさんの事件はまさしく『暗殺』だった。この二つの事件を同列に並べようとするPR企業側の努力と、それに素直に従うメディア報道の単調さには目を見張るものがあるが、二つの事件の背後にある犯行動機はかなり性質が異なるように思われるし、手法も全く異なり、事件の影響力もまるで違っている。(今回の事件では、ロシアの資源マフィア筋が“商品”を使って仇敵に復讐したようにも見える。)


復活するモスクワのスパイ活動に注目―フィナンシャル・タイムズ [goo ニュース/フィナンシャル・タイムズ]

リトビネンコ氏を知る人たちは(よほど親しい友人でなければ)、たとえば社会正義を掲げた調査報道ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ氏に比べると、彼はとらえどころのない曖昧な人間だったと話す。そしてリトビネンコ氏は、ポリトコフスカヤ記者の殺害を調査していると話していた。


リトビネンコ氏の痛ましい死は、ロシア治安当局が紛れもなく再生を遂げている最中に起きた。ロシアの治安・諜報活動は1990年代にいったん停滞したが、ここ数年は確実に復活しつつある。東欧諸国の情報機関と違い、KGBソ連崩壊後も解体されなかった。解体ではなく、KGBは対外活動担当と国内担当の2機関に分かれ、対外情報庁(SVR)と連邦保安庁FSB)という新名称で呼ばれるようになった。KGBがかつての威光を失うに伴い、多くの幹部は高報酬を求めてロシアの新興財閥の下で働くようになった。そしてほとんどの場合、新興成金の警備責任者となり、1990年代ロシアで展開したビジネスの闇の部分ににらみを利かせる担当となったのだ。


ラスプーチンと呼ばれた男 佐藤優の地球を斬る/ロシア流“暗殺術” [FujiSankei Business i.]

「この事件で誰が得をするか」ということが諜報の世界の文法だ。リトビネンコ氏を露見するような手法で、放射性物質を用いて暗殺することで、「ロシアはソ連と変わらぬ恐ろしい国だ」という印象が強まるだけで、プーチン政権は何の得もしない。それから、ロシアが本気になってリトビネンコ氏を始末してしまおうと考えたならば、中東か北アフリカあたりの観光地におびき寄せ、交通事故の形で処理してしまえばよい。事実、諜報業界での暗殺は現在も交通事故、自殺の形で処理されることが多い。薬物暗殺などという、確実に捜査に発展するような手法は避ける。


 こういう場合、放射性物質専門家の見解が重要だ。26日産経新聞の視点が優れていて、安斎育郎・立命館大学教授(放射線防護学)の「食事に混入されていれば、便で検知される。尿だけに出たというならば、11月1日より前に注射された可能性が高い。ポロニウム210の半減期は約4カ月間ある。体内でアルファ線によって臓器が破壊されたのだろう」とのコメントを掲載している。このことから、現在流布されている「11月1日に、ロシアの諜報機関員がすしにポロニウムを混入し、リトビネンコ氏を殺害した」という物語が成り立たないことがわかる。


NEWS25時:ロシア ゴルバチョフ元大統領退院 [MSN/毎日新聞]

タス通信によると、ドイツ南部ミュンヘンの病院で21日に頸(けい)動脈の手術を受けたゴルバチョフソ連大統領(75)が29日、退院した。元大統領が主宰するシンクタンクゴルバチョフ基金」が明らかにした。数日後にモスクワに戻る予定という。元大統領は19日に入院し、頸動脈に異常が見つかった。


放射性物質、ロンドン市内の12カ所から 毒殺疑惑 [CNN]

ロシア連邦保安局(KSB)の元大佐アレクサンドル・リトビネンコ氏(43)が変死した事件をめぐり、リード英内相は30日、同氏の死因に関連した可能性のある放射性物質の痕跡が、ロンドン市内の12カ所で見つかったと述べ、「検出場所は今後さらに増える可能性がある」との見方を示した。


リード内相によると、同日までに捜査の対象となったのは約24カ所。このうち、リトビネンコ氏が滞在していたホテルや、同氏が倒れる直前に食事をしたすし店、モスクワ便の運航に使用されたブリティッシュ・エアウェイズ(BA)機2機などで、放射性物質の痕跡が確認されている。


捜査当局はまた、モスクワの空港で3機目のBA機を調べているほか、ロシアのトランスアエロ航空が使用するボーイング737型機などについても捜査中。


英の旅客機2機から放射性物質の痕跡 [NIKKEI NET]

機内で発見された放射性物質の痕跡がリトビネンコ氏の尿から検出された「ポロニウム210」かどうかは不明。BAは問題の3機が10月下旬以降に飛んだ221回の飛行に搭乗した約3万3000人と連絡を取り始めている。


 欧州線が中心で、ロンドン・モスクワ線も含まれている。ただ、搭乗者の健康への影響の可能性は「非常に低い」している。BAによると28日、捜査当局から調査のため3機を運航からはずすよう要請を受けた。


ロシア、ポロニウムを毎月8グラム輸出 英国へは停止 [朝日新聞]

ロシアのキリエンコ原子力庁長官は28日の会見で、ロンドンで死亡したロシアの元情報将校リトビネンコ氏から検出された放射性物質ポロニウム210について、毎月8グラムを国外に輸出していることを明らかにした。ただし、かつて行われていた英国への輸出は01〜02年以降停止しているという。

 長官は現在の輸出先として米国企業を挙げ、科学的な目的のほか、印刷業や塗料産業などで使用されていると説明した。「ポロニウム210の半減期は138日で、長期貯蔵は不可能だ」とも指摘。


検視を開始、FBIが捜査参加 ロ元情報将校の不審死 [CNN]

ロシア連邦保安局(KSB)の元将校、アレクサンドル・リトビネンコ氏(当時43)の不審死事件で、司法当局は1日、ロンドン市内の病院で検視を開始したことを明らかにした。尿から検出した放射性物質ポロニウム210と死因の関係を詳しく調べる。


(中略)


一方、米連邦捜査局FBI)当局者は1日までに、事件捜査に加わるよう要請されたことを明らかにした。大量破壊兵器専門のスタッフが科学的分析の捜査を支援するとしている。

騎士(ナイト)は敵の勢力におさえられた桝目をとび越えることができる。
騎士(ナイト)は、通例、敵陣の桝目のなかでその行動を終える。




レン・デイトンベルリンの葬送 (ハヤカワ文庫 NV 184)』p.62