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Olivier Messiaen: Quatuor pour la Fin du Temps



Amazonメシアンの作品を検索していたら、非常に美しいカヴァージャケットを持つCDがいくつもあった。以前別のところに書いた『世の終わりのための四重奏曲』(Quartet for the End of Time)のレビューとともに紹介しておきたい。

Quartet for the End of Time

Quartet for the End of Time


オリヴィエ・メシアン/Olivier Messiean (1908-1992)
世の終わりのための四重奏曲/Quatuor pour la Fin du Temps(1941)

  1. 水晶の礼拝
  2. 時の終わりを告げる御使のためのヴォカリーズ
  3. 鳥たちの深遠
  4. 間奏曲
  5. イエズスの永遠性への讃歌
  6. 7つのトランペットのための狂乱の踊り
  7. 時の終わりを告げる御使のための虹の錯乱
  8. イエズスの普遍性への讃歌


メシアン:世の終わりのための四重奏曲

メシアン:世の終わりのための四重奏曲

殺すことも死ぬことも、存在からの出口を求めること、自由や否定が作用を及ぼす場所へと趣くことである。




エマニュエル・レヴィナス『実存から実存者へ』p.121(西谷修訳、講談社学術文庫

Quartet for the End of Time

ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ピアノという編成は「偶然の結果」である。第二次世界大戦中、従軍したメシアンは、ドイツ軍に捕らえられ、ゲンリッツ捕虜収容所に収容された。その時、たまたま同収容所に居合わせた音楽家がヴァイオリン奏者であり、チェロ奏者であり、クラリネット奏者、ピアニストであった──希望なき収容所の中でよせ集められた四人の音楽家たち。


英語のタイトルは "Quartet for the End of Time" 。<The End of Time>は極限の体験によって生まれた作品をこれ以上ないくらい的確に表している。もし「戦争文学」というものがあるなら、この曲こそ「戦争音楽」を代表するものだろう。1941年に作曲され、初演も収容所内で行われた。

Messiaen: Quartet For The End Of Time

Messiaen: Quartet For The End Of Time

曲は、ヨハネ黙示録からインスピレーションを得たもので、いかにもメシアンらしい神秘的な雰囲気に満ちている。色彩豊かなピアノ、鳥の声、宇宙的な広がり……。激情的でまさに錯乱と言った部分もあるが、異様な静寂を湛えた第5楽章、第8楽章がなんといっても素晴らしい。「永遠性」ではチェロが、「普遍性」ではヴァイオリンが、朗々と悠久のメロディを奏で、神秘的なヴィジョンが展開される。そして、聴くものを深い瞑想へと誘う。


現在、私たちがこの音楽を聴くことができるのは、まったくの偶然に過ぎない。ある人物にとっての<The End of Time>が遅延されたことによって。

024-119 Olivier Messiaen: Quartet for the End of T
「壊れた世界」とか「覆された世界」という表現は、今やありふれた常套句と化してしまったが、それでもやはりある掛け値なしの感情を言い表してはいる。諸々の出来事が合理的な秩序から乖離してしまい、ひとびとの精神が物質のように不透明になって互いに浸透し合えなくなる。
そして多様化した論理は相互に不条理をきたし、<わたし>はもはや<きみ>と結びつきえない、その結果、知性がこれまでおのれの本質的機能としてきたはずのものに対応できなくなる──こうした事態を逐一確認してみると、たしかに、ひとつの世界の黄昏のなかに、世界の終末という古くからの強迫観念が蘇ってくる。




エマニュエル・レヴィナス『実存から実存者へ』p.34

メシアン/世の終わりのための四重奏曲(1940)

メシアン/世の終わりのための四重奏曲(1940)


『世の終わりのための四重奏曲』は8楽章からなる。「なぜ完全な数である7ではないのかについてメシアンは、

6日間の天地創造のあとの聖なる安息日第7日は、無窮のうちに延長し、永遠なる光と不変の平穏な第8日となるからだと説明している。




ミシェル・ベロフ、エーリッヒ・グルーエンベルク、ジェルヴァース・ド・ペイエ、ウィリアム・プリース演奏による『世の終わりのための四重奏曲』(EMI)の西村朗氏の解説より

Quartet for the End of Time

Quartet for the End of Time