HODGE'S PARROT

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He wore blue velvet



すっかりサソリの毒にやられて……身体が熱くなり、毒を抜くために「動き」まわらなければならない状態──いや、それはタランチュラ/タランテラだ!
とにかく血潮──血液が滞留して「バビロンの街路を歩きまわって、その泥沼のうちに、あたかも肉桂や貴重な香油の中であるかのように、ころげまわっていた」*1のだった。
Mice vs Scorpion

かれは、競技場の血を見るやいなや、残忍の盃を飲みつくし、目をそむけずにそれを凝視し、狂暴を飲みほしながら、それに気付かず、醜悪な競技を見て満足し、血なまぐさい快楽に酔いしれた。かれはもはや、ここに来たときのかれではなく、かれを迎えいれた群衆の一人であり、かれを誘ったもののほんとうの仲間となった。




アウグスティヌス『告白』(服部英次郎 訳、岩波文庫)上巻 p.183

で、ケネス・アンガーの映画『Scorpio Rising』であるが、やはり音楽が印象的だ。その「感じ」をどうしてもメモしておきたくなった──何気にアウグスティヌスのような装いで。例えば、ボビー・ヴィントンの《ブルーベルベット》とエルヴィス・プレスリーの《悲しき悪魔》。
Blue Velvet-Bobby VintonDevil In Disguise by Elvis Presley

ブルー・ベルベット》ってデヴィッド・リンチの映画でも聴いたことがあったが、ケネス・アンガーの映像の方が、はるかに「蠍が rise する」感じだった。”She wore blue velvet”と歌われるなか、ブルージーンズの「彼」が着替える──ベルトを締め、臍のまわりの毛がうっすらと輝く……それだけのものなのだが、「rising」にはそれだけで十分だと言わんばかりに。
そしてプレスリーの曲でも、天使=「変装した悪魔」というリリックを聞かせながら、「悪友」のような二人の少年が登場するマンガが映し出され、〈アイドル〉──すなわちジェームス・ディーンとマーロン・ブランドがクローズアップされる。その感じ。毒がじわじわと効いてくる。

アンガーが『スコピオ・ライジング』を編集中に、ファミリーフィルムによって製作されたC級キリスト映画『エルサレムの道』が玄関先に誤って配送された。彼はそれを「神々からの賜物」と解し、青い色調をつけてバイカーのハロウィーン・パーティーに(映画の中の二番目に主要なモンタージュ要素として)カット挿入したのである。〈枝の主日〉(パーム・サンデー)に使徒たちと一緒に歩くキリストが紹介され、二つの「テーマ・ソング」(「彼についていこう」”I Will Follow Him”と「彼は反逆者」”He's a Rebel”)がキリストの場面をブランドとディーンにつなぐ。




カレル・ロウ『啓明のルシファー』(武邑光裕二 訳、『夜想』18、ペヨトル工房) p.33

James Dean: At Speed

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Brando: A Life in Our Times

Brando: A Life in Our Times


それにしても。ジェームス・ディーンはともかくマーロン・ブランドってこれほどまでにカッコよくてセクシーだったんだ。




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*1:アウグスティヌス『告白』より