すっかりサソリの毒にやられて……身体が熱くなり、毒を抜くために「動き」まわらなければならない状態──いや、それはタランチュラ/タランテラだ!
とにかく血潮──血液が滞留して「バビロンの街路を歩きまわって、その泥沼のうちに、あたかも肉桂や貴重な香油の中であるかのように、ころげまわっていた」*1のだった。
Mice vs Scorpion
かれは、競技場の血を見るやいなや、残忍の盃を飲みつくし、目をそむけずにそれを凝視し、狂暴を飲みほしながら、それに気付かず、醜悪な競技を見て満足し、血なまぐさい快楽に酔いしれた。かれはもはや、ここに来たときのかれではなく、かれを迎えいれた群衆の一人であり、かれを誘ったもののほんとうの仲間となった。
で、ケネス・アンガーの映画『Scorpio Rising』であるが、やはり音楽が印象的だ。その「感じ」をどうしてもメモしておきたくなった──何気にアウグスティヌスのような装いで。例えば、ボビー・ヴィントンの《ブルーベルベット》とエルヴィス・プレスリーの《悲しき悪魔》。
Blue Velvet-Bobby Vinton/Devil In Disguise by Elvis Presley
《ブルー・ベルベット》ってデヴィッド・リンチの映画でも聴いたことがあったが、ケネス・アンガーの映像の方が、はるかに「蠍が rise する」感じだった。”She wore blue velvet”と歌われるなか、ブルージーンズの「彼」が着替える──ベルトを締め、臍のまわりの毛がうっすらと輝く……それだけのものなのだが、「rising」にはそれだけで十分だと言わんばかりに。
そしてプレスリーの曲でも、天使=「変装した悪魔」というリリックを聞かせながら、「悪友」のような二人の少年が登場するマンガが映し出され、〈アイドル〉──すなわちジェームス・ディーンとマーロン・ブランドがクローズアップされる。その感じ。毒がじわじわと効いてくる。
アンガーが『スコピオ・ライジング』を編集中に、ファミリーフィルムによって製作されたC級キリスト映画『エルサレムの道』が玄関先に誤って配送された。彼はそれを「神々からの賜物」と解し、青い色調をつけてバイカーのハロウィーン・パーティーに(映画の中の二番目に主要なモンタージュ要素として)カット挿入したのである。〈枝の主日〉(パーム・サンデー)に使徒たちと一緒に歩くキリストが紹介され、二つの「テーマ・ソング」(「彼についていこう」”I Will Follow Him”と「彼は反逆者」”He's a Rebel”)がキリストの場面をブランドとディーンにつなぐ。
- 作者: Lee Raskin,Tom Morgan
- 出版社/メーカー: David Bull Pub
- 発売日: 2005/11/30
- メディア: ハードカバー
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: Richard Schickel
- 出版社/メーカー: Da Capo Press
- 発売日: 2000/09/11
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
それにしても。ジェームス・ディーンはともかくマーロン・ブランドってこれほどまでにカッコよくてセクシーだったんだ。
[関連エントリー]