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アメリカ型資本主義を嫌悪するヨーロッパ



アメリカ型資本主義を嫌悪するヨーロッパ

アメリカ型資本主義を嫌悪するヨーロッパ


ひとことで言えば、アメリカではなくEU欧州連合)に学べ! ということだろう。
例えば「社会的資本」(ソーシャル・キャピタル)について。アメリカでは社会的資本が低下しているが、ヨーロッパでは社会的資本が高水準を保っている。社会的資本の担い手である市民社会組織(CSO、シビル・ソサイティ・オーガニゼーション)のつながりこそが、欧州統合の「第三の柱」だという。

社会的資本という考え方の重要性を最初に指摘したハーバード大学のロバート・パットナム教授は、社会的資本を「協調的な行動をとりやすくさせることにより、社会の効率を改善させる信頼、規範、ネットワークなどの社会的取り組み」であると定義している。


社会的資本というのは、別にむつかしい概念ではない。要するに人間同士が築く信頼関係のことで、それがなければどんな商売も成り立たない。経済発展にはなくてはならない要素である。


一九九八年ノーベル経済学賞を受賞したインド人経済学者アマルティア・セン氏はこう述べている。
「資本主義の成功は自己の利益のための行動だけに依存している経済制度だと結論するのは正しくない。そうではなく資本主義は、信用(reliability)、信頼(trust)、そして(逆の誘惑に駆られた場合でも守り抜く)事業の廉直さをも含む、多くの要素からなる、複雑で洗練された価値体系に依存しているのである」


セン氏が信用とか信頼とかいう言葉で表現しているのは、社会的資本のことである。




福島清彦『アメリカ型資本主義を嫌悪するヨーロッパ』(亜紀書房) p.81-82


ヨーロッパでは、アメリカと違って、社会資本がさらなる充実を果たしている。ロマノ・プロディ前EC委員長は、国境を越える市民社会的組織に支えられたヨーロッパの統治を「ネットワーク・ヨーロッパ」と呼び、それを賞賛し、奨励した。

社会的資本は、あくまで個人が所有するものではなく、人間どうしが作る諸関係と団体、組織によって生まれるものである。企業で同じ設備を使って生産していても、職場の人間関係が敵対的になり、不信感に満ちるようになると、その企業の生産活動を支える社会資本の一部が破損したことになる。




p.85

ソーシャル・キャピタル

ソーシャル・キャピタルの概念を端的にいえば、「社会的なつながり」「社会全体の人間関係の豊かさ」を意味するといえる。あるいは地域力、社会の結束力と言ってもよい。今日、このソーシャル・キャピタルの概念は:国際機関や欧米各国はじめ日本などにおいても広く注目され、様々な概念規定や研究が試みられている。たとえば、OECDはこの概念を、「グループ内部またはグループ間での協力を容易にする共通の規範や価値観、理解を伴ったネットワーク」と定義している。また、市民同士のコミュニケーションの密度や、市民と行政のパートナーシップが活発であるほど、豊かな社会が形成されるという考え方に立ったソフトな概念であるとしている。




ウィキペディアより

ところで、福島清彦氏による次の指摘も、興味深い。

社会的資本の担い手は市民社会組織である。市民社会組織が発達したのは所得の向上と労働時間短縮で、職場を離れた時間に多くの有益な活動ができるようになったことが一因である。さらに運輸と通信の技術が発達したことにより、人々が遠隔地にいても参集したり情報交換をしやすくなったことも、市民社会組織が発達した大きな要因である。市民の自主的な組織づくりがしやすくなり、成果をあげやすくなった。


例は悪いが、国際テロ組織アル・カイダも交通手段と情報通信技術の発達によって、その存在と活動が可能になった市民の自主組織である。非営利で、無国籍で、情報技術を駆使している点では他の非政府国際機関と変わりはない。




p.87-88