ワディム・レーピンの『妖精の踊り〜華麗なるヴィルトゥオーゾの世界』(Tutta bravura)を聴く。パガニーニやサラサーテといった超難曲ばかりを集めた強気の選曲で、ストラディヴァリウス「ルビー」(Ruby, 1708年製)を掻き鳴らす。ピアノはアレクサンドル・マルコヴィッチ。
- アーティスト: レーピン(ワディム),チャイコフスキー,エルンスト,パガニーニ,バッツィーニ,ヴィエニアウスキ,サラサーテ,ポンセ,プシホダ,アウアー,マルコヴィチ(アレクサンドル)
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2004/01/21
- メディア: CD
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何といっても、ハインリヒ・ヴィルヘルム・エルンスト(Heinrich Wilhelm Ernst、1814 - 1865) の『シューベルトの《魔王》による大奇想曲』(Der Erlkönig, Grand Caprice Op.26)である。シューベルトの歌曲(詩はゲーテ)をヴァイオリン1挺で──伴奏部分も併せて──弾く、という途轍もない難曲だ。
たしかにフランツ・リストによる同曲のピアノ独奏用編曲はある。だたピアノは両手10本の指を使えるので、「元のピアノの」伴奏のダダダダダダダダ…に、「歌の」メロディを乗せることができる(もちろんリストなので、原曲以上に華麗で、まるで「三本の手」で弾いているかのようか効果を生み出している)。
これがヴァイオリンだとどうなるか。やはりダダダダダダダダ…の「三連音の」伴奏の上に、
Mein Vater, mein Vater, jetzt faßt er mich an! Erlkönig hat mir ein Leids getan!
という子供の絶叫のメロディーを乗せるのだ。これがいかに途方もない超絶技巧を──とくにボーイングにおいて──要求する凄まじい曲だということがわかるだろう。その響きは、まさにデモーニッシュだ。
ちなみに、このレーピンのアルバムのタイトルにもなっている、やはりヴァイオリンの超絶技巧を駆使したパッツィーニの『妖精の踊り』作品25は、エルンストに献呈されている。《魔王》大奇想曲とはだいぶ曲調の異なる軽やかな「ショウピース」だ。
所で、旗太郎さん、波蘭(ポーランド)の諺に、提琴奏者(ヴァイオリニスト)は引いて殺す──と云うのがあるのをご存知ですか。
[The Official site of Vadim Repin]