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モサド、勧誘工作の手口

ビクター・オストロフスキー&クレア・ホイ著『モサド情報員の告白』(By way of deception、TBSブリタニカ)。イスラエルの情報機関モサド*1の元オフィサーが書いたノンフィクションで、1991年の発売当時、イスラエル当局がこの本の出版差止請求を起こし、それがいったん認められた後、出版社側の逆提訴によってニューヨーク州最高裁判所が先の判決が憲法違反に当たるとして逆転判決を下した経緯を持つ。その騒ぎもあって、その騒ぎゆえに、この本は(当然)ベストセラーになった。

By Way of Deception

By Way of Deception


その第四章「勧誘工作の手口」。オストロフスキーは、情報収集の大切さを「講義」で習う。それによると、収集される情報のうち60%から65%は公開メディアから──すなわちラジオ、新聞、テレビなどからもたらされる。残りの25%は衛星、テレックス、電話、無線連絡によって、5%ないし10%は連絡係から、2%から4%がフマント──エージェント、あるいはソメト/メルシャという勧誘部署から情報がもたらされるという。
またサヤン(複数形サヤニム)と呼ばれる、イスラエル国外のユダヤ人の協力者がいる。彼らは自発的な協力者で、世界中に数多く存在している。例えばロンドンだけでも約2000人が活動しており、それとは別に5000人がリストに載っているという。サヤンは100パーセント、ユダヤ人でなければならない。車サヤンは、モサドのメンバーに必要事項を書き込まなくても車を貸してくれる。アパートサヤンは、部屋を探しだしてくれる。銀行サヤンは、真夜中でも金を都合してくれる。医者サヤンは警察に通報することなしに銃創を治療してくれる。その他いろいろなサヤンがいる。

そして「勧誘」についても講義を受ける。オストロフスキーは、カトサ(ケースオフィサー)の伝説的な人物イェフダ・ギルによる、エージェント勧誘の見事なテクニックを学ぶ。”マイスター”ギルによると、人を勧誘する「餌」は主に三つある。すなわち「金」、復讐心やイデオロギー、その他もろもの原因からくる「感情」、そして「セックス」である。

「諸君には常に思い出してもらいたい。いついかなるときでも、ゆっくりと細心の注意を払って事にあたるように」とギルは言った。「自分の足で探して歩け。その国の少数民族に属している人間が見つかるはずだ。ひどい扱いを受けて、復讐心に駆りたてられている者が。そういう男は勧誘できる。それに、諸君が相手に金を出し、相手がその金を受け取ったときには、相手は勧誘に乗ったのだと判断していいし、相手は勧誘されたことを自覚している。誰だって、なんの理由もないのに金などくれはしないと心得ているし、なにか見返りをする気でいなければ、誰だって金をもらおうなんてしやしない」




p.129-130

モサド情報員の告白

モサド情報員の告白

*1:Mossad 。正式名称はインスティチュート(The Institute)、ヘブライ語でハ・モサド・レ・モディン・べ・レ・タフキディム・アユハディム