HODGE'S PARROT

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軍事転用が可能な機密情報漏洩、東芝子会社元社員SVRへ



米国は二種類の通常戦を想定して、RMA軍を整備している。一つは、米国と同じようなRMA軍を持った国と戦う戦争である。もう一つは、情報兵器を強化した工業化社会の軍隊と戦う場合である。



中村好寿『軍事革命(RMA) <情報>が戦争を変える』(中公新書)p.149

少し前のニュースだが、東芝子会社の元社員が、ロシア対外情報庁(SVR、旧KGB)部員と見られる人物に軍用可能な機密情報を漏らした事件をメモしておきたい。とりあえず国内ニュース記事より。

http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20051020/20051020a4820.html

軍事転用が可能な電子機器などの機密情報を漏らし、勤務する会社に損害を与えたとして、警視庁公安部は20日、背任の疑いで、東芝子会社の元社員の男(30)と、情報を受け取っていた在日ロシア通商代表部のロシア人の男(35)を書類送検した。

調べでは、2人は昨年9月から今年5月にかけて9回にわたり、都内で接触。元社員が会社の機密情報をロシア人の男に提供して見返りに現金100万円を受け取り、会社に損害を与えた疑い。

http://news.goo.ne.jp/news/sankei/shakai/20051020/e20051020001.html

漏洩(ろうえい)したのは半導体に関する情報などで、ミサイル感知装置のほか、戦闘機や潜水艦のレーダーなど軍事転用が可能なものだったという。


 ロシア人の男はコンサルタント業者として元社員に接近。国籍も「イタリア」と偽っていた。

http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20051020/K2005102002170.html

2人は昨年春ごろ、電気機器関連の展示会で、代表部員が元社員に声をかけて知り合った。代表部員は素性を隠してコンサルタントと自称していたが、元社員は「(代表部員の言う)職業と要求する内容が明らかにかけ離れ、おかしいと思ったが金がほしかった」と話している。だが、代表部員だとは最後まで知らなかったらしい。代表部員は03年10月に入国し、今年6月に出国した。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/archive/news/2005/10/21/20051021ddm041040095000c.html

東芝子会社の元社員が在日ロシア通商代表部の元部員に半導体情報を漏らした背任事件で、元部員が通信機器を扱う別の販売店の店員とも接触し、店の資料などを受け取っていたことが、警視庁公安部の調べで分かった。実害のある情報ではなかったため立件は見送られた。元部員が店員を通じてより高度な情報を握る上司と接触する意図を持っていた可能性もあると、公安部はみている。

 元部員は、ロシア人のV・サベリエフ容疑者(35)で、ロシア対外情報庁(SVR、旧KGB)の科学技術担当とみられている。昨年9月〜今年5月、東芝の100%子会社「東芝ディスクリートテクノロジー」(川崎市)の元社員の男(30)から、東芝が開発した半導体「IGBT」(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)に関する情報を受け取り、見返りに現金計約100万円を渡したとして、元社員とともに背任容疑で書類送検された。

Russian implicated in espionage [Japan Times]

The Metropolitan Police Department sent papers to prosecutors Oct. 20 regarding a former employee of a Toshiba Corp. subsidiary on a charge of breach of trust for allegedly providing information to an official from the Russian Trade Representation and receiving about 1 million yen in payment, as well as relating to the Russian man on a charge of conspiracy.
It is the fifth instance since 1989 in which the police have exposed cases related to spying activities involving members of the Russian trade representative office. The MPD believes the Russian has links to Russia's Foreign Intelligence Service, known by the Russian acronym SVR.

この事件に関しては「新聞記事・ニュース批評@ブログ」が「まとめ」ている。

それによると、彼らは展示会(幕張メッセ)で接触。ロシア人工作員はイタリア人を装って、なんと「イタリアのバッハ」と名乗ったそうだ。面白い(笑)。


輸出管理レジームとは、兵器やその関連汎用品の供給能力を持ち、かつ不拡散に同意する国々(主に先進工業国)が集まり組織する、輸出管理についての協調のための、国際条約に拠らない枠組みである。現在、核兵器、生物・化学兵器、ミサイル、通常兵器のそれぞれに対応した以下の4つの輸出管理レジームが存在する。

  1. 原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers Group(NSG):核兵器)とザンガー委員会(Zangger Committee:核兵器
  2. オーストラリア・グループ(Australia Group(AG):生物・化学兵器
  3. ミサイル技術管理レジーム(Missile Technology Control Regime(MTCR):ミサイル)
  4. ワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement(WA):通常兵器)

日本はこれらすべての輸出管理レジームに参加している。輸出管理は懸念国やテロ組織など、大量破壊兵器やその関連物資を入手しようとする者に対し、いわば供給サイドから規制を行うための枠組であり、日本としてこれを積極的に活用しつつ、これら輸出管理自体の強化にも貢献していく方針である。




『日本の軍縮・不拡散外交』(外務省 軍備管理・化学審議官組織 監修)p.186