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瞬間の神秘 アンリ・デュティユー:管弦楽曲集成

Arte Nova からアンリ・デュティユーの管弦楽曲集成がでた。三枚組み3,150円という廉価だ。

デュティユー:管弦楽曲集成

デュティユー:管弦楽曲集成

デュティユー(Henri Dutilleux、b. 1916)は僕の好きな作曲家の一人。いわゆる「前衛音楽」とは距離を置いた作風だが、しかし決して「守旧派」でもない。「デュティユーの音楽」としか言いようのない、得もいえぬ美しい瞬間がそこにある。実に精妙・精緻な響きだ。

参考までに、以前書いたデュティユ『交響曲第1番、2番<ル・ドゥーブル>』のレビュー

メシアンより8歳若く、ブーレーズより9歳年上のアンリ・デュティユ。世代的に、何かと話題のメシアンブーレーズの「ゴージャス師弟」に挟まれているためか知名度において多少損をしているかもしれない。また、いわゆるアヴァンギャルドとは一線を画く作風で、しかも幾分内省的であるためか、その作品はどうしても地味な印象を与えてしまう。
しかしデュティユの音楽は一曲一曲が本当に素晴らしい。聴きこむほどにその美しさを堪能させてくれる──しかも響きの美しさだけでなく、構造の美しさまでもだ。彼のアプローチは、聴き手を挑発し驚かすことではなくて、聴き手を美の中に取り込み閉じ込めることである。キー・ワードは「鏡」

いま、24の弦楽器、ツィンバロンとパーカッションのための《瞬間の神秘》を聴いているが、音色の交錯・変遷が素晴らしい。《瞬間の神秘》は1954年に作曲されたものだが、同時期に発表されたピエール・ブーレーズの《ル・マルトー・サン・メートル》(1953-1955)に響きが近いようで、やっぱり遠い。
ちなみに1954年前後には、シュトックハウゼン《少年の歌》《コントラ・プンクテ》、ルイジ・ノーノ《イル・カント・ソスペーソ》、クセナキス《メタスタシス》、ヘンツェ《鹿の王》、ルトスワフスキ管弦楽のための協奏曲》、ケージ《4分33秒》、ジャン・バラケ《返却された時間》などが発表されている。