HODGE'S PARROT

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Enjoy The 再構成/再解釈

夜の目醒めは無名である。不眠のうちには、夜に対する私の警戒があるのではなく、目覚めているのは夜自身なのだ。<それ>が目醒めている。この無名の目醒めにおいて私は存在にくまなく曝されているのだが、この目醒めのなかで、私の不眠を満たしているあらゆる思考は何ものでもない無に宙吊りになっている。その思考には支えがない。いってみれば私は、ある無名の思考の主体であるよりはむしろその対象なのだ。


エマニュエル・レヴィナス『実存から実存者へ』(西谷修訳、講談社学術文庫)p.133

……というか本当に眠れなくて……ワイパックス効いてこないぞ。

なので、デペッシュ・モードのリミックス・アルバム『depeche mode remixes 81-04』を聴いている。
かつて「12インチ・シングル」という<メディア>があり、アーティストは、単発のシングル、コンセプト重視のアルバムという規定(契約上)の縛りとは別の、自在な音楽的実験を行っていた。
DMには、こういった多数多様な「バージョン」が存在していた。このCDはそのベスト盤である。一つの曲(オリジナル)を複数のアレンジ(トラック)で楽しむことができる。

In the remix world that Depeche Mode have helped create, you Get a sinful, conceptually diabolical chance to hear Depeche Mode duet with ......


by Booklet notes

もちろんRe-Mix といっても、デペッシュ・モードの場合、ただの「ロングバージョン」ではない。リミキサーの解釈・個性が十分に刻印されたものばかり。神であるデペッシュ・モードの音楽を、いかに悪魔的に解体/再構築するか──それがリミキサー(信者)としてのアーティストの腕の見せ所だ。ここには罪深い快楽が存在する。

Your own personal Jesus
Someone to hear your prayers


Depeche Mode "Personal Jesus"

この中で、なんと言っても素晴らしいのが、傑作『Enjoy The Silence』を Linkin Park のマイク・シノダ(Mike Shinoda)が”Reinterpreted”したもの。ここでは「ヘヴィ」に解釈され、これまで慣れ親しんでいたオリジナルとは別の非日常的な雰囲気を持つサウンドになっている。
眠れぬ夜に、トランキライザーの倦怠に酔いながら、ざわめきを感知したい。

実際、私たちの「異常な日常」は種々のリズムから、リズムとリズムとの複雑な干渉から成っている。異常な日常それ自体がリズムの錯綜なのだが、時に、そのようなリズムに操られ、弄ばれていると感じることはないだろうか。呪術的な祭祀での集団的恍惚を思い浮かべればいい。それは今もコンサート会場や競技場や宗教団体の道場でくり返されているのだが、主体がリズムに操られて、その言いなりになることのうちに、レヴィナスはリズムの魅力と危険を看守している。


合田正人レヴィナスを読む』(NHKブックス)p.136

リミックス81-04

リミックス81-04