HODGE'S PARROT

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エマールの『メシアンへのオマージュ』を聴いて



Hommage a Messiaen

Hommage a Messiaen

ピエール=ロラン・エマール/Pierre-Laurent Aimard によるオリヴィエ・メシアン作品集『Hommage a Messiaen』を、じっくりと聴くことができた。収録曲は以下。
《8つの前奏曲》(1928-29)

  1. 悲しい風景の中の恍惚の歌
  2. 軽やかな数
  3. 過ぎ去った瞬間
  4. 夢の中の触れ得ない音
  5. 苦悶の鐘と別れの涙
  6. 静かな嘆き
  7. 風に映える陰

《鳥のカタログ》より (1956-58)

  • ヨーロッパウグイス
  • モリヒバリ

《4つのリズムのエチュード》より

  • 火の島 I (1949)
  • 火の島 II (1950)


なぜ、音楽史上最も高名なピアノ作品の一つである「音価と強度のモード」が省かれたのかな、と思いつつも、エマールの奏でるメシアンの音楽を堪能した。聴こえてくるのは、シューマンの《交響的練習曲》や《謝肉祭》と同じく、透明で美しく響くピアノの音である──そこには攻撃的な「アタック」は聴こえない、なだらかにプログラムは進んでいく。非常に明晰である。迷いがない。そこには「個人的な」感情の表出とは無縁の「普遍的な」美がある。
ちなみに、各々印象的なタイトルを持つ《前奏曲集》──作曲者はシュルレアリスムの詩人ポール・エリュアール/Paul Éluard の詩に惹かれていた──は、これまでミシェル・ベロフの若い頃の演奏をよく聴いていた。エマールと比べるとベロフは、緩急の差が激しく、強弱も広く、タッチ(アタック)も強烈であった──さらにもっと若い頃の録音である《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》を聴くと、それがより顕著だ。
例えばブックレットにある《前奏曲集》の演奏時間を参照すると、第3曲と第7曲以外はベロフの方が速い。とくに第1曲、2曲、そして最後の8曲にかなり差があるので、聴こえてくる音楽の印象も、それなりに違ってくる。


エマール ベロフ
1 2.20 1.36
2 6.47 5.33
3 1.37 1.37
4 4.27 4.19
5 3.55 3.31
6 9.22 9.00
7 2.58 3.25
8 5.02 4.36


エマールの演奏を聴くと、ベロフは多少荒っぽく聴こえるが、それでも僕はベロフの演奏が好きだったりする。ベロフによるシューマンの《クライスレリアーナ》での「アタック」や《幻想曲ハ長調》の「ドラマ」も気に入っているし。

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