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ランドフスカのヨーロッパ録音全集



ワンダ・ランドフスカ(Wanda Landowska、1879 - 1959)の「ヨーロッパ録音集1928-1940」(Wanda Landwska The Well-temperd Musician、The Complete European Recordings 1928 - 1940)を聴いている。8枚組のボックスセットだ。

The Well

The Well


以前書いたように、ランドフスカの演奏──「昨今の」オーセンティックな古楽とは明らかに異なる大胆な表現と「特殊仕様の楽器」による迫力の音──に僕は大いに魅了された。このCDは、そんな凄腕のチェンバロ奏者ランドフスカの録音をまとめて聴くことのできるマストバイ・アイテムだ。
もちろん録音年代を考えれば、モノラルであるし、それなりのノイズは入っている。しかしユナイテッド・アーカイヴ社/United Archives の丁寧なリマスタリングのおかげで、鑑賞には全然問題ない。むしろ、この時代の音がこれほど良好な音で再現されていることに驚いたくらいだ。

演奏にも驚く。チェンバロという楽器のイメージを覆すかのような、色彩豊かで華麗な音楽が聴こえてくる。低音も、腹にグッとくるような充実の響きを聴かせる。そして何と言っても熱っぽい雰囲気。この独特の雰囲気は得難い──まるで何かの儀式に参加しているかのような感じだ。凄みがある。ゾクゾクさせてくれる。
例えば7枚目。いきなり馴染みのメロディーが聴こえてくる。ヘンデル? あ、そうか、これがブラームスの《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ》Op.24 の原曲だったのか。ラモーの組曲は、あの《タンブラン》が入っているやつで、ランドフスカの手に掛かると、典雅というよりは神秘の奥深さを感じる。

そしてバッハのニ短調協奏曲 BWV.1052。これは本当に熱狂させてくれる──いったいチェンバロのどこに、こんなカラフルな音が備わっていたのか。メタリックな艶とリズミックな運動が素晴らしい。このヴィルトゥオーゾチェンバリストの腕前に圧倒される。
キングインターナショナルのウェブサイトを見ると、ランドフスカの奏でるバッハを聴いて、ブゾーニトルストイ、チュルリョーニスらがショックを受けたとの記述がある。その通り。まさしく神業、ショッキングな演奏だ。





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