HODGE'S PARROT

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『パズル』 Nadie conoce a nadie/1999/スペイン 監督マテオ・ヒル

舞台はスペイン、セビリア。作家志望でクロスワードパズル作成者の青年シモン(エドゥアルド・ノリエガ)に、警告めいた挑戦メッセージが届く。クロスワードパズルに「敵対者」という言葉を含ませろ、と。するとこの「言葉」に触発されたかのように、奇妙で猟奇的な殺人が次々と発生する。
事実関係を探るシモンだが、しかし行動を起せば起すほど、彼は邪悪な罠に絡め取られていく。しかもシモンは一連の殺人の容疑者として当局にまで追われることになる。絶体絶命。おりしもセビリアではキリスト教の祭り、聖週間で街は異様な熱気に包まれていた……。

監督は、多分、日本のサブ・カルチャーに関心を持っている人なのかもしれない。なにしろいきなりオウムの麻原彰晃の顔が画面に映る。さらにコンピュータゲーム、オタク、ヴァーチャルリアリティ、新本格推理小説みたいな「装飾された死体、予告殺人、衆人監視の殺人」、偽創世記、劇中小説、ロールプレイングゲームそのままのビーム銃による銃撃戦等など。連続殺人の動機も「なんじゃ、それ!」っていう気宇壮大にしてバカバカしさ限りなし。

しかし観客を驚かしてやろう、という熱意、荒唐無稽ながらも独特の映像センスを見せ付けるその才気を買いたい。
そして、オウム真理教的「感性」を思わせる結社の登場や、ストーリーがロールプレイングゲームそのものに収束していくところは、この映画を海外における「オタク・ムーヴィー」の一例として議論の俎上に挙げられるだろう(もちろん「ゲーム脳の恐怖」を「追認」するような展開である)。とりわけ「動物」=カエルの「欲望」はあまりにもスノビズムだ。もっとも主演はハンサムで「イケている」エドゥアルド・ノリエガなのだが。