HODGE'S PARROT

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ソラブジのピアノソナタ第2番



パールシーの血を引くイギリス生まれの作曲家、カイホスルー・シャプルジ・ソラブジ(Kaikhosru Shapurji Sorabji、1892 - 1988)といえば、ゾロアスター教拝火教)である。善神アフラマズダと悪神アンラマンユの戦い……。長大な演奏時間を要する超人的なまでの超絶技巧、そして独特の思想が込められたソラブジの作品を演奏できる──ソラブジの音楽にアクセスできる──音楽家は限られている。それが(一部であるが) YouTube にあった。
テレフ・ジョンソン(Tellef Johnson、b.1977)というピアニストの演奏による《ピアノソナタ第2番》だ。
SORABJI Piano Sonata No. 2 Climax Live!


凄い音楽だ。楽譜は見えないけれど、演奏の様子を見れば、作曲者がいかに多大な極限までの要求をピアニストに強いているのかが、わかる──もちろん聴衆もかなりの集中力を強いられる。なにやら神聖な儀式が執り行われているかのようだ。
テレフ・ジョンソンは、この曲を録音しており、栄えある「ソラブジ・アーカイヴ」にもその記事が載っている。

Piano Sonata 2

Piano Sonata 2


[The Sorabji Archive]


で、テレフ・ジョンソンのウェブサイトがあるのだが……音楽家というよりも映像作家としての創作活動のほうが強調されている感じだ。とりわけ「ファンタスティック」な作風の作家として──そこには幻想的な絵やマンガが散りばめられている。
[Tellef Johnson]


Tellef Johnson -- 3 min. tracking shot in grocery



さすが、ソラブジをパフォーマンスするだけのことはある。多分、ジョンソンは、ソラブジの〈精神〉にも深く共感しているのだろう。

善と悪と快と苦と我と汝──それらは創造者の眼前にただよう多彩な煙と思えた。創造者は自分というものから目をそらそうとした。──こうしてかれはこの世界を創造した。
苦悩する存在者にとっては、おのれの苦悩から目をそらし、自分を忘れることは、陶酔的な歓楽である。陶酔的な歓楽と忘我、それがこの世界だと、かつてわたしには思われた。



ニーチェツァラトゥストラ』(手塚富雄 訳、中公文庫) p.45