イギリスの詩人 A.E.ハウスマン(A. E. Housman、 1859 – 1936)の連作詩集『シュロップシャーの若者』(A Shropshire Lad)を知ったのは、マーガレット・ミラーの『殺す風』に引用された『Into my heart an air that kills』という詩であった。この短い詩に魅了された。
わたしの心に、殺す風が
遠くの国から吹いてくる。
なんだろう、あの思い出の青い丘、
あの塔は、あの農園は?
あれは失したやすらぎの国、
それがくっきりと光って見える。
倖せな街道を歩いて行った
わたしは二度と帰れない。
小笠原豊樹(岩田宏) 訳
マーガレット・ミラー『殺す風』(ハヤカワ文庫)より
いちおう原文も記しておこう。
Into my heart an air that kills
From yon far country blows:
What are those blue remembered hills,
What spires, what farms are those?
That is the land of lost content,
I see it shining plain,
The happy highways where I went
And cannot come again.
上記イラストは、Agnes Miller Parker(1895 - 1980)による。
「あなたには友達がいるでしょう」
「ロンや、ハリーの友達はいるわ。でも私の友達は一人もいない」
(中略)
「さっき言った通り、ハリーはその気でいます。彼を過小評価してはいけませんよ。立派な男です、寛大な男です」
「ええ、わかっているわ。なつかしのハリーね。最後の一枚のシャツまで友達にくれてやる──でなきゃ、ポーカーの賭金代わりにくれてやる、そんな人よ。あの人は負け方が上手なのね。だからみんなにとても好かれるんじゃなくて? とてもやさしく、美しく負けるのよ。でも負けることに変わりはない。いつでも船に乗り遅れるのよ。どうしてかしら」
「その船でどこへも行きたくないからでしょう」
マーガレット・ミラー『殺す風 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』 p.216-217
『シュロップシャーの若者』は、ジョージ・バターワースやジョン・アイアランド、サミュエル・バーバーといった作曲家によって音楽が付され、歌曲として歌われている。とくにハイペリオンから出ているCDはアラン・ベイツによる朗読も含まれた「完全版」で、まさしくグッジョブと呼ぶに相応しい。
- アーティスト: C W Orr,E J Moeran,George Butterworth,John Ireland,Lennox Berkeley,Mervyn Horder,Samuel Barber,Graham Johnson,Anthony Rolfe Johnson
- 出版社/メーカー: Hyperion UK
- 発売日: 2001/12/11
- メディア: CD
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