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クール・ブリタニア ムストネンのベートーヴェン



フィンランドのピアニスト、オリ・ムストネン(Olli Mustonen、1967年生まれ)によるベートーヴェンの変奏曲集を聴く。

Beethoven;Piano Variations

Beethoven;Piano Variations


ムストネンと言えば、軽やかでありながら、しかし抉りこむようにして鋭く打つ「奏法」によって、実に刺激的なピアノの音を聴かせてくれる。
例えば、いかにもベートーヴェンらしい「重厚な」ハ短調の「創作主題による32の変奏曲 WoO.80」や、通称《エロイカ変奏曲》で知られる堂々たる規模と内容を誇る「創作主題による15の変奏曲とフーガ変ホ長調 Op.35」を、ムストネンは華麗に舞う指先でクールに自在に捌く。緊張の連続。しかし小気味良い。もちろん解釈も独特。
凄いピアニストだ、ムストネンは。
あまり演奏されない「パイジェルロの主題」による二つの変奏曲(WoO.69、WoO.70)にしても、強烈なアクセントを施し、スピーディで刺すように鋭いタッチに何よりも惹かれる。「《森の乙女》のロシア舞曲(ヴラニツキー)の主題による12の変奏曲 WoO.71」も同様、才気溢れる演奏を聴かせてくれる。
ここには鈍重で厳しい「ドイツ音楽」はない。
素晴らしいピアニストだ、ムストネンは。
ところでこのCDには、

という英国礼賛ともいうべき作品が収録されている。作曲年代が同時期であり、交響曲第3番「英雄」の後だと言えば……説明は要らないだろう。
もちろんベートーヴェンの音楽なので、テンポの遅い主題も、ドラマティックにピアニスティックに変奏され「労作」のほどが伺える。そしてムストネンは、軽やかに、スピーディに、鋭く抉るように、小気味良く、ピアノを打ち鳴らしくれる。これぞ Cool Britannia だ。快感だ。


→ ルール・ブリタニア [ウィキペディア]
→ 女王陛下万歳/God Save the Queen(King) [ウィキペディア]