HODGE'S PARROT

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ニック・カーショウのリドル、リドル、リドル



80年代に書かれたポップ・ミュージックの中でも、とりわけその詩的な雰囲気で際だっている曲。それが Nik Kershaw(ニック・カーショウ)の≪The Riddle≫だ。
同名アルバム『The Riddle』(1984)に収録。

Nik Kershaw - The Riddle



ニック・カーショウの、ちょっと癖のあるヴォーカルで歌われる哀愁を帯びた民謡風のメロディは、一度聴いたら忘れられない。しかも転調が見事で、アレンジも凝っており、響きは実に豊かである。ニック・カーショウが優れた音楽家であることがわかる。
映像もなかなか魅力的だ。小太鼓の音に導かれて、メルヘンの世界へと誘われる。

ブリキの太鼓 1 (集英社文庫) 小さな人びとと大きな人びと、小さな海峡と大きな海峡、小文字のABCと大文字のABC、小さなハンスとカール大帝ダヴィデとゴリアテ一寸法師と巨人。


ぼくはいつまでも三歳児であり小びとであり、親指太郎であり、背の伸びない一寸法師のままであった。それは大小の公教要理のような区別から解放されるためであり、172センチのいわゆる成人となり、鏡の前でひげを剃っている僕の父と称する男の言いなりになって、むりやり商売をさせられないためである。マツェラートの希望するところでは、二十一歳のオスカルが大人の世界に入るということは、食料品屋をしてもらうことだったのだから。
また現金をじゃらじゃらさせなくてもいいように、僕は太鼓にしがみつき、三歳の誕生日以降、ただの1センチも成長しなかった。僕は三歳児のままだったが、三倍賢い子供だった。




ギュンター・グラスブリキの太鼓』(高本研一 訳、集英社文庫) p.76-77

ザ・リドル

ザ・リドル




ところで、この≪The Riddle≫をまったく対照的にカヴァーした映像が YouTube にあった。テクノ・ヴァージョンとアコースティック・ヴァージョンである。

Nick kershaw - The Riddle TECHNO REMIX DJ MALLORCA



The Riddle (Nik Kershaw Acoustic Cover) by Kris Shred



どちらも素晴らしい、と言いたいところだが、やはりアコースティックの方が趣があると思う。ギターの素朴でありながら、しかし肺腑を抉るような音。詩。そして次第に、情熱的に感情のダイナミズムが加わっていく歌声。非常な感動を覚えさせてくれる。

Wise men fighting over you


It's not me you see.
Pieces of valentine
And just a song of mine.
To keep from burning history


Seasons of gasoline and gold


Wise men fold.




Nik Kershaw ”The Riddle”

千のプラトー―資本主義と分裂症 重要なのは、秘密をつかむ知覚自体も秘密でしかありえないということだ。スパイ、覗き魔、ゆすり屋、匿名の密告者など、秘密を垣間見ようとする者はすべて、その後の目的に関係なく、暴かれる秘密に劣らず秘密に満ちているのだ。
常に女性や子供や小鳥が、秘密裡に秘密を知覚する。


きみたちの知覚よりも鋭敏な知覚が、きみたちには知覚しえないものを、きみたちの箱に隠されたものを知覚する。秘密を知覚する立場の者には職業上の秘密があると予断してもいい。そして秘密を守護する者は、必ずしも事情に通じているわけではないとはいえ、やはり一つの知覚を体現している。なぜなら、彼らは秘密を暴こうとする者を知覚し、見破らなければならないからだ(つまり反スパイ活動)。




ジル・ドゥルーズ&フェリックス・ガタリ千のプラトー』(宇野邦一 他訳、河出書房新社)p.330