HODGE'S PARROT

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写真の交換/レンズの転換 あるいは写真のレンズの多様性




写真家ブラッサイ(Brassai、本名ジュラ・ハラース)による『プルースト/写真』をパラパラとめくる。

プルースト/写真

プルースト/写真



今日、ブラッサイのレンズを通して、眼に付いた印象的なショットは、次の箇所だ。

Proust in the Power of Photography
語り手は、人間の判断はすべて相対的なものだと納得するにいたる。戦争が始まると、「ドイツに対するフランスのおぞましい判断」の客観性にまで疑念を持つようになる。プルーストは語り手とシャルリュスの論争の中で、この問題に関するシャルリュスの意見を敷衍する、「国家とよばれる個人の大きな集合体は、ある程度、個人と同じようにふるまう」。盲目的愛国主義や情熱の論理につねに動かされている国家の判断に対しては、執着のない人のみが論駁し得るのだ。《時を求めて》では、シャルリュスだけが交戦国について比較的客観性のある判断ができている。またシャルリュスは、執拗なプロパガンダはドイツ側のもフランス側のも軽蔑していた。


語り手はシャルリュスの言葉を聞いて、自分ももっと冷静になろうとする。「シャルリュスのドイツびいき、あるいはアルベルチーヌの写真を見たときのサン=ルーの視線は、私をドイツぎらいから解放するとまでいかないまでも、少なくともドイツぎらいは純粋に客観的なものだという信念からはしばらく私を解放してくれたが、思うに、憎しみも愛と同じなのではないだろうか。ドイツについてフランスが現在持っているおぞましい判断〔……〕も、感情の客観化が主にそうさせているのであり、またこの感情ゆえにサン=ルーにとってはラシェルがいとしく、私にとってはアルベルチーヌがいとしいことになるのだ。」




ブラッサイプルースト/写真』(上田睦子 訳、岩波書店) p.98-99


Brassai: The Eye of Paris

Brassai: The Eye of Paris


[Brassaï]

ブラッサイ写真集成

ブラッサイ写真集成

Brassai: The Eye of Paris

Brassai: The Eye of Paris

  • 作者: Anne Wilkes Tucker,Richard Howard,Avis Berman,Houston Museum of Fine Arts,J. Paul Getty Museum,National Gallery of Art (U. S.),Brassai
  • 出版社/メーカー: Museum of Fine Arts Houston
  • 発売日: 1999/06/01
  • メディア: ペーパーバック
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