HODGE'S PARROT

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HEY KIDS, You Spin Me Left Round(80年代キッズのように)




ジル・ドゥルーズ&フェリックス・ガタリの『アンチ・オイディプス』が新訳・文庫版で登場した。以前「デカくて重くて高い」と文句を言った甲斐があった。

アンチ・オイディプス(上)資本主義と分裂症 (河出文庫)

アンチ・オイディプス(上)資本主義と分裂症 (河出文庫)

アンチ・オイディプス(下)資本主義と分裂症 (河出文庫)

アンチ・オイディプス(下)資本主義と分裂症 (河出文庫)

定住者たちの国家の間には、砂漠とステップを駆け抜ける遊牧民たちの戦争機械があり、国家に裁可された正統科学とは別の少数派(マイナー)の知、遊牧民の知がある。それは、大文字の普遍的真理と脱構築という相補的な枠組の外部にある別の知のあり方だ。
遊牧民の知(シアンス・ノマッド)、別名ドゥルーズガタリ




別冊宝島44  わかりたい、あなたのための現代思想入門』(宝島社)p.217

ついでに浅田彰の『構造と力―記号論を超えて』も文庫にならないのだろうか……っていうのは80年代的な思考なのだろうか。

一方、近代社会に対し諸々の異なった象徴秩序を並置してみせることですべてを一様に相対化するという戦略も無効である。実際、一定のリジットな象徴秩序を持たないことを特質とする近代社会は、それ自身、他の諸々の象徴秩序なりパラダイムなりを相対化し、あまつさえそれらをパック化・商品化するだけの怪物的力量を備えているのである。ドゥルーズ=ガタリの言うように、古いコードを脱コード化(デコデ)することで成立した近代社会は、他の様々なコードを解読(デコデ)することにも長けている。異質な体系を突きつけてみても近代社会は微動だにしない、むしろ、近代社会とはレヴィ=ストロースの本を買いパック旅行を買うことで異質な文化との出会いを手軽に体験できるような社会であり、ローカルなパラダイムの相克によって学問の「進歩」を加速してきた社会なのである。




浅田彰構造と力―記号論を超えて』(勁草書房)p.17


そんなことを思ったのは、YouTube に爆笑もののビデオがあったからだ。

  • 「80's Music Video」 (http://www.youtube.com/watch?v=d9Md2lkaYec&mode=related&search=
  • 「Breakfast Club - Spin Me Right Round」 (http://www.youtube.com/watch?v=EN6fp6dQepM&NR


80年代に一世を風靡した、ピート・バーンズ率いるデッド・オア・アライブDead or Alive の『You Spin Me Around(like a record)』の強烈なビートに乗って「青春ドラマ」が展開される。これが80年代のキッズなんだよ、って感じて。

You spin me right round, baby
Right round like a record, baby
Right round round round......


『80's Music Video』の80年代をパクった「イマドキのガキ」は最高に笑わせてくれるし、

You Spin Me Round

You Spin Me Round

=

という、モリー・リングウォルド、エミリオ・エステヴェスジャド・ネルソンアンソニー・マイケル・ホールアリー・シーディら出演したジョン・ヒューズ監督『ブレックファスト・クラブ(The Breakfast Club)』に Pete Burns 様 の声が絡むのも面白すぎる。思いもしなかった効果が発揮される。傑作だ。

先に引いたグラムシの言葉は、「英知においては悲観主義者、だが、意思においては楽観主義者たれ」と続く。困難なみちではある。これをモットーにしていたアルチュセールが昏い場所に入ってしまったという報を聞いたのは、そう遠い過去のことではない。ぼくたちのまわりでも、表面をとりつくろっている分だけ、実相はいっそう絶望的に思える。


あの表面の下では知の廃墟が腐臭を放っているのだと聞かされたところで、今さら誰も驚きはしない。それでも、廃墟の腐敗と頽廃の中から舞い上がるヨタカがミネルヴァのフクロウよりも高くとぶ一片の可能性に賭ける程度には、楽観主義者でありたいと思う。




『構造と力』p.23-24

YouTubeは、さまざまなアマチュアビデオクリップや大量の無許可CMビデオを提供する宝庫となっている。米カリフォルニア州トーレンス在住のケビン・デービス氏(16)は、YouTubeでR&Bシンガーのクリス・ブラウンとラッパーのリル・ウェインス、ザ・ゲームの音楽ビデオを楽しんでいる。


 「(YouTubeでは)たいてい探しているものが見つかる」と同氏。


 YouTubeは大手テレビネットワークのCBS、ならびに大手レコード会社のWarner Music Group(WMG)、Vivendi傘下のUniversal Music Group(UMG)、SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENTとライセンス契約を交わしている。これらエンターテインメント企業は、提供したビデオを提供したビデオをユーザーが1回閲覧するごとにYouTubeから広告収入の分配を受ける。


YouTubeはコンテンツ自体をフィルターにかけるつもりはないと強調している。




不正コピー対策導入でYouTubeはどう変わるか [ITmedia]

彼はブーレーズでもクセナキスでもなくケージにこそ学ばねばならない。遊戯と偶然性の関係は、まさしくそのようなものでなければならないのである。



こうして、パラフレーズははてしもなく続く。




『構造と力』p.230