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「可能性の技術」 ヨーロッパ小国の外交政策




1990年出版という国際政治の本としては古さが否めない──ソ連がありユーゴスラヴィアが存在した冷戦末期のものだ──が、百瀬宏 編『ヨーロッパ小国の国際政治』(東京大学出版会)を引いてみたい。
この本はヨーロッパの「小国」──「極小国」とも「低開発国」とも区別される「先進小国」──について書かれたものである。例えば、ベネルックス三国、ノルウェーポーランド、ユーゴ、フィンランドオーストリア

これら、ヨーロッパの小国は、「可能性の技術」として政治力を発揮し──発揮せざるを得ず──自己の軍事力以外の諸要因を駆使して、権力政治の場において、自国の安全保障に役立ててきた。
「自己の軍事力以外の諸要因」とは、

  1. 他国の軍事力
  2. 資源その他の経済的要因
  3. 自国の位置などの地理的要因
  4. ”時を稼ぐ”といった時間的要因
  5. 相手国の指導者の合理的判断
  6. 相手国の国内分裂
  7. 相手の諸国間の矛盾と利害対立

などである。

ところで、ヨーロッパの諸小国は、第二次世界大戦後の国際関係において、NATO の構成国として西側陣営に所属するか、WPO すなわち東側に加わるか、あるいは1970年代以降とくに非同盟・中立諸国と呼ばれるようになった国々と行動をともにしてきたといえる。
しかし、ここで留意しなければならないことは、こうした分類によってそれぞれの国の対外政策を理念化してはならないことである。同盟に加わったからといって、その国が自国の利益を犠牲にしてひたすら同盟に奉仕しているとか、もはや独自の外交はもたない、といった見方は現実とは会わない。
同じように、中立主義の方針をとる国が、「中立主義」という何か原則のようなものがあって一様にそれを踏襲してきたと考えるなら、それは誤りである。およそ中立・非同盟諸国ほどまちまちな利益に突動かされて、それぞれが特色をもっている国々はないであろう。こうしたことは、考えてみればどれも当たり前なことであるが、とかく小国ほど、その内政・外交を単純化され、ステロタイプ化した映像をもたれやすいのである。しかし、現実にはこれらの国々は、それぞれがおかれている条件のなかで、先にあげたような諸要因をたくみに組合わせながら、独自の外交を行ってきたのである。




「序章 なせ、いま、ヨーロッパ小国か?」p.13 

ヨーロッパ小国の国際政治

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