現代思想ガイドブック「ラウトリッジ・クリティカル・シンカーズ」日本語版より、サラ・サリー著『ジュディス・バトラー』が出た。バトラー初の概説書だ。
- 作者: サラサリー,Sara Salih,竹村和子
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2005/12/01
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Judith Butler (Routledge Critical Thinkers)
- 作者: Sara Salih
- 出版社/メーカー: Routledge
- 発売日: 2002/03/28
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難解と言われ忌避されがちなバトラー。だが、この「入門書」によって、『ジェンダー・トラブル』のみならず「バトラー・トラブル」も少しは解消されるだろう(もちろん自分に語っているのだが)。
とりあえずゲイの皆さんは必読!
それと本書の竹村和子の「訳者のあとがき」によると、来年2006年1月、お茶の水女子大学二十一世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」がバトラーを招聘し、講演会を開くそうだ。バトラー初来日か!
- 作者: ジュディスバトラー,Judith Butler,竹村和子
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 1999/03/01
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- 作者: ジュディスバトラー,Judith Butler,竹村和子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- 作者: ジュディスバトラー,Judith Butler,竹村和子
- 出版社/メーカー: 青土社
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ところで、この「バトラー本」と同時発売が──まるで図ったように──トニー・マイヤーズ著『スラヴォイ・ジジェク (シリーズ現代思想ガイドブック)』。アマゾンでも「この商品に興味がある人は、こんな商品にも興味をもっています」と両者対になっている。ま、この「ジジェク本」も一緒に買ったんだけど。
で、ジジェク本をパラパラとめくっていたら、スラヴォイ少年のことが書いてあって眼を引いた。それによると10代の彼は、英語文学、とくに探偵小説ばかり読んでいたそうだ。
そういえば僕が『斜めから見る』の存在を知り、それを熱心に読んだのは、何よりも推理小説について書いてあったからで、しかも(当時)熱狂的なファンだったマーガレット・ミラーを始め、ルース・レンデルやパトリシア・ハイスミスといったサスペンス系の作家にさかんに言及していたからだ。
アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』は、ある巧妙な例外によって、このことを例証する。この作品では、殺人は容疑者全員によって犯される。そしてまさにそのために、彼らは有罪ではありえない。それで、逆説的だが必然的な結果として、犯罪者と犠牲者が一致する。すなわち殺人は当然の処罰だったのである。
スラヴォイ・ジジェク『斜めから見る』(鈴木晶訳、青土社)p.328
もちろん、戦後型「犯罪小説」は考察の対象から外した。その種の小説では、関心の的が、(「知っているはずの主体」)としての、あるいは一人称の語り手としての)探偵から、犠牲者(ボワロー=ナスルジャック)あるいは犯人(パトリシア・ハイスミス、ルース・レンデル)へと移行している。そうした移行の必然的結果として、語りの時間的構造全体が変わってくる。物語は「ふつうに」線的に語られ、犯罪の前に起きることに力点が置かれ、犯罪がもたらす結果や、犯罪にいたる出来事の流れを再構成する企てにはもはや力点は置かれない。
ボワロー=ナルスジャックの小説(たとえば『ディアボリーク』)では、物語はふつう未来の犠牲者の視点から語られる。たとえば一人の女の身の上に不思議なことが起き、恐ろしい犯罪を予告しているように思われるが、その通りなのか、それともそれらはすべて彼女の妄想にすぎないのか、われわれには最後までわからないようになっている。
それとは対照的に、パトリシア・ハイスミスの作品では、ありとあらゆる不測の事態や心理的な行き詰まりから、一見「正常な」人間が殺人を犯すにいたる。
(中略)
ちなみに、マーガレット・ミラーの傑作『ビースト・イン・ヴュー』(狙った獣)は、この「犠牲者」小説と「犯罪者」小説の対立の興味深い一例で、そこでは病的な人格の分裂のために、犯人がその犯罪そのものの犠牲者であることがわかる。
スラヴォイ・ジジェク『斜めから見る』p.328-329
なかでもパトリシア・ハイスミスは、ジジェクが頻繁に言及し、解釈し、援用するミステリ作家として、断トツの地位にある。そしてハイスミスは『リプリー』や『スモールgの夜』(大文字のGではないんだね)といった作品を残していることからもわかるように彼女はレズビアンとしても有名であった。未訳だが『The Price of Salt』(Carol)というレズビアン小説も1950年代にすでに発表されていた。
- 作者: Patricia Highsmith
- 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
- 発売日: 2004/03/01
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Beautiful Shadow: A Life of Patricia Highsmith
- 作者: Andrew Wilson
- 出版社/メーカー: Bloomsbury Pub Plc USA
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Highsmith: A Romance of the 1950's
- 作者: Marijane Meaker
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しかし一方でハイスミスは『女嫌いのための小品集』(Little Tales of Misogyny)といった反フェミ的な──反フェミが享楽するであろう──作品もモノにしている。ジジェクとバトラーとのアンビヴァレントな関係も、こんなところにあるのかもね。
- 作者: Patricia Highsmith
- 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
- 発売日: 2002/08/01
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Nothing That Meets the Eye: The Uncollected Stories
- 作者: Patricia Highsmith
- 出版社/メーカー: W. W. Norton & Company
- 発売日: 2003/11/01
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- 作者: Patricia Highsmith
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- 作者: マーガレット・ミラー,Margaret Millar,雨沢泰
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1994/12/18
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- 作者: マーガレットミラー,Margaret Millar,船木裕
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/03
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- 作者: Ruth Rendell,ルースレンデル,羽田詩津子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1996/05
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- 作者: パトリシアハイスミス,Patricia Highsmith,佐宗鈴夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2000/05
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- 作者: パトリシアハイスミス,Patricia Highsmith,加地美知子
- 出版社/メーカー: 扶桑社
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- 作者: パトリシアハイスミス,Patricia Highsmith,宮脇孝雄
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1993/01
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