なかなか本が読めなくて(とくに小説が)…読んでも以前のようにブログに感想を書いてなくて…。というわけで、2010年の新刊書の中から個人的に印象に残った書籍をざっと記しておきたい。
- 作者: 冨田伊織,鬼界彰夫
- 出版社/メーカー: 青志社
- 発売日: 2010/08/09
- メディア: 単行本
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ウィトゲンシュタイン関連では『青色本』が、ちくま学芸文庫から出た。
- 作者: ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン,野矢 茂樹,大森荘蔵
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 文庫
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これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
- 作者: マイケル・サンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/05/22
- メディア: 単行本
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- 小田内隆『異端者たちの中世ヨーロッパ』(NHKブックス)
- 作者: 小田内隆
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2010/09/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この定義からはっきりすることは、異端が洗礼を受けた者であること、したがって異端はあくまでキリスト教の内部に属する問題であること。キリスト教を放棄(背教)したところには成り立たない。異端者は自らがキリスト者、それも真のキリスト者であることを公言するものである。
さらに、異端は教義の明白な否定・懐疑であり、たんに教会の権利から分離すること(離教)ではない。このように、「異端」は「離教」や「背教」といった他のタイプの逸脱とは明確に区別されていることがわかる。
『異端者たちの中世ヨーロッパ』 p.24-25
- 島村菜津『エクソシスト急募』(メディアファクトリー新書)
- 作者: 島村菜津
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/08/25
- メディア: 新書
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「サタン」はヘブライ語で「告発者」を意味する。
キリスト教において、悪魔のなかで最も重要な地位にいるのはこのサタンであり、その手下である大勢の悪魔がデーモンだ。
実はサタンやデビルたちは、もともと神の創造物であり、はじめはよき天使だった。しかし自らの意思で堕落し、天から追われたのである。天使は人間と違って肉体という限界をもたない。時空を超えた存在、つまり「霊=スピリト」である。
『エクソシスト急募』 p.62
- スラヴォイ・ジジェク『ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』(栗原百代 訳、ちくま新書)
ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として (ちくま新書)
- 作者: スラヴォイ・ジジェク,栗原百代
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/07/07
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フランス革命に呼応して、ハイチの黒人奴隷が「同じ」自由、平等、友愛という理念のもとに反乱を起こした。ハイチ革命*1は「実際に起きたのに信じられないという特異な性格をもって、歴史の舞台に登場した」。ハイチの人々はフランス革命のスローガンをフランス人たち以上に「文字どおりに」受け止めたのだった。
ハイチでの暴動=革命を鎮圧し、奴隷制度を復活=反革命を実行させるために、ナポレオンはフランス軍を派遣する。そこでフランス軍は、ハイチの黒人奴隷たちによる、何かのつぶやきのような、何かの歌のようなものを聞いた──フランス軍はそれを部族の戦闘の歌のようなものだろうと思った。だが、近寄ってみると、ハイチ人たちが歌っていたのは《ラ・マルセイエーズ》だったのだ。《ラ・マルセイエーズ》を歌うハイチ人たちを前にしてフランス軍は、闘う相手をまちがえていないかと声に出して自問した。
ジジェクは「このような出来事は普遍性(Universal)を政治的なものにする」と述べる──それはスーザン・バック=モース(Susan Buck-Morss)が述べたように、「普遍的な人間性が境界で見られる」のだ、と。バック・モースは『ヘーゲルとハイチ』という論文で次のように主張した。
人類の普遍性はむしろ、多様な異なる文化を対等に扱った集団的文化属性を介して間接に認識されるというより、歴史の裂け目に生じた出来事に現れる。自分のもつ文化の緊張を限界まで高めた人たちが、歴史の断絶面において限界を超越した人間性を表わす。そしてこの人たちの言い分を理解できそうなのは、彼らの未熟で自由で傷つきやすい状態に私たちが同化しているときだ。文化の差異にかかわらず、共通の人間性は存在する。特定の集団に帰属しないでいることが、普遍的・道徳的情操を、現代の情熱と希望の源を引きつけうる、隠された連帯を可能にするのである。
スラヴォイ・ジジェクの『ポストモダンの共産主義』(ちくま新書) p.188-189
《ラ・マルセイエーズ》を歌っていたハイチ人たちは、それこそ植民地支配の「刻印」なのではないのか? 自らを解放する過程ですら、西欧宗主国での都市の解放というモデルに従わざるをえなかったのではないのか? 真に革命的に行為とは、植民者であるフランス人たちが被植民者のハイチ人たちの歌を歌うことではなかったのか?
それは二重にまちがっている──ジジェクはそのように断言する。
この非難は二重にまちがっている。第一に、見かけと逆で植民地の領有国は、その国のアイデンティティを示さない(植民地の)歌を被植民者が歌うことを大いに認めている。植民者は寛容さと相手への尊重を示すために、被植民者の歌を習うことを好む。
第二に、はるかに重要なことに、ハイチ兵が「ラ・マルセイエーズ」を歌ったことのメッセージは、「ほら見ろ、おれたち野蛮な黒人も、おまえらの高尚な文化と政治に慣れ、手本としてまねることができる!」ではなく、もっともはっきりと「この戦いでおれたちは、きさまらフランス人よりフランス的だ。革命のイデオロギーの奥深い意義を、きさまらが担えない意義を表わしている」と宣言しているのだ。
このようなメッセージは植民者を激しく動揺させずにはおかない。
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- 作者: 佐藤優・解説,共同訳聖書実行委員会,日本聖書協会
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/10/19
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- 作者: 礒山雅
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/04/12
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当時ヨーロッパには啓蒙思想が浸透しつつあり、そこでは理性が万能視されて、信仰すら理性の光の下に洗い直そうとする風潮が、あらわれてきた。しかし、理性がどうして十字架の神秘を解せようか。キリスト者の滅びが実は新たな命への蘇生であることを、どうして理性が信じることができようか。バッハは詩人とともに信仰の立場に立ち、皮相な流行に、警鐘を発する。
『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』 p.199
- 作者: ジョン・フランクリン・バーディン,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/12/11
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- 『三島由紀夫の愛した美術』(宮下規久朗&井上隆史、新潮社)
- 作者: 宮下規久朗,井上隆史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/10/01
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さらにこの本では、三島由紀夫が選んだ「西洋美術史における青年像八点」が掲載されている。それは以下。
- ミュロン『円盤投げ』
- 『デルフォイの馭者』
- ミケランジェロ『瀕死の奴隷』
- ティツィアーノ『手袋をもつ男』
- ルドヴィコ・カラッチ『聖セバスティアヌス』
- ベラスケス『バッカスの勝利』
- ダヴィッド『ナポレオン・ボナパルトの肖像』
- ギュスターヴ・モロー『若者と死』
なるほど。後で僕も同様の趣向のランキングをやってみたい。
- 作者: トルクァート・タッソ,A.ジュリアーニ,鷲平京子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/04/17
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ピエール・リヴィエール---殺人・狂気・エクリチュール (河出文庫)
- 作者: ミシェル・フーコー,慎改康之,柵瀬宏平,千條真知子,八幡恵一
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/08/04
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- 『ミクロコスモス 初期近代精神史研究 第1集』
- 作者: 平井浩
- 出版社/メーカー: 月曜社
- 発売日: 2010/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: アレックス・ロス,柿沼敏江
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2010/11/25
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- 作者: アレックス・ロス,柿沼敏江
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2010/11/25
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ブリテンは翌年の12月、細菌性心内膜炎から起きた合併症、マーラーが亡くなったのと同じ病気で、63歳で亡くなった。マイケル・ティペットがとりわけ寛容な追悼文を書いた。「私はいまここで、ブリテンが私にとって、これまでに会い、またこれまでに知ったもっとも純粋に音楽的な人であったと言いたい」。
それと同じように目を引いたのは、イギリス国教会の首長である女王エリザベス二世のとった行動である。ブリテンの死のニュースが届いたとき、彼女はお悔みの電報をピーター・ピアーズに送った。
『20世紀を語る音楽 2』 p.464
この『20世紀を語る音楽』は、アレックス・ロスの両親と彼の「最愛の夫」であるジョナサンに捧げられている。