HODGE'S PARROT

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アウシュヴィッツを阻止するには、たった一つしか方策がない



先日書いたtransnewsさんの記事に対するコメントを訂正したい。

改めて最新の記事を読んでみた。

Pressure Mounts Over Iranian Execution Of Gay Teens [365Gay.com]

ゲイの少年二人がイランで公開処刑された。Mahmoud Asgari君16歳、Ayaz Marhoni君18歳。
二人は、同性愛行為が死刑になることを知らなかった、と語った。

このイランの同性愛者の「虐殺」に対し、ワシントンからモスクワまで世界中から非難があがっている。

ロシアのゲイ団体のリーダーは、プーチン大統領に書簡を渡した。そこには「恐怖政治」を行っているイランに対する国交断行と経済制裁を求めている。ロシアはイランの最大の貿易相手国である。


スウェーデン。外務省スポークスマンPer Saland氏は、このイランの問題を深刻に受け止めていると語った。スウェーデンは「死刑制度」そのものに反対している。

"We are against the death penalty and we particularly react when it comes to the execution of minors, pregnant women and the mentally disabled," Saland said.

The Federation for Lesbian, Gay and Transgender Rights' chair, Soren Andersson, called on the Swedish government not to deport gay and lesbian asylum seekers back to Iran.

"Sweden has turned gay and lesbian refugees back to Iran and they should know that these people could be killed," he said.

ロンドン。ゲイの権利団体 OutRage は、ブレア政権が、イランに対し正式に抗議することを求めている。

ワシントンの人権団体「Human Rights Campaign」は、ライス国務長官に、イランを非難するよう要請した。

"This crime warrants an immediate and strong condemnation from the Department of State," said the letter, signed by HRC President Joe Solmonese

テヘランノーベル平和賞受賞のShirin Ebadi 氏は、イラン政府の死刑実行を非難。また政府の「少年をレイプした」という主張に疑義を示した


International anger grows over gay executions Gay.com UK

The pair were also charged with raping a 13-year-old boy, although the majority of news services say this charge has been trumped up by the Iranian state in a bid to avoid international criticism.

こういった現実を知ると、クィア理論をはじめとする「理論」っていうのは、いったい何の役に立っているのだろう。いったい誰に「反抗」して、何を「解体」して、どんな「ユートピア」を夢見ているのか。それによって何ができるのか。アメリカとその衛星国──米軍の旗の下──の「安全な砂場」で戯れているだけではないのか。甘えたアナーキズムに酔っているだけではないのか。
人の命なんか助けられない。

はっきりと書く。
イランのこの「ジェノサイド」を止めさせるのは、何よりもアメリカの圧力しかない。大国に頼るほかない。ロシアや中国、EU、そして日本政府に頼るしかない。
ナチスを倒したのは、連合軍であることを忘れることはできない──忘れてはならない。

しかしいま、苦痛とともに自覚せざるをえない。戦争それじたいがアウシュヴィッツ、つまりジェノサイド(大虐殺)を引きおこすのではないことを。場合によってはアウシュヴィッツを阻止(あるいは抑止、または停止)するには、たった一つしか方策がない──それは戦争だ──ということを。

(中略)

私は、こう考えざるをえませんでした。誰が戦争を起こしているのか、誰がジェノサイドに手を染めているのか。戦争停止によって、セルビア側によるジェノサイドがまんまと続けられるだけの結果になってしまったら……。
かりにNATOが戦争を否定していたとしたら、それはコソヴォの人々にとって、どういう事態を意味していたでしょう──助けはこない、ということです。ボスニアの人々がセルビアクロアチアの侵略者の攻撃にされされていた──殺され、爆撃されていた──三年のあいだ、結局NATOが彼らに伝えたメッセージは助けないということだったのです。

何事かをしない、つまり無為。それもまた行為なのです。

もう一つ、アジアの例証です。クメール・ルージュが行った恐怖のジェノサイドを終わらせたのは、ヴェトナムによるカンボジア侵入でした。バルカン地域におけるNATOの行動(アメリカが言いだし、先頭に立ち、また大部分を実行した行動ですが)とは異なり、ヴェトナムはカンボジア侵攻の口実として「人道上の」理由はもち出しませんでした。それはたぶんに、ヴェトナムの拡張主義によるいつもどおりの出来事たったのでしょう。とはいえ、一つの結果として数百万の人々の絶滅が唐突に終わりました。もしヴェトナムがカンボジアに侵攻していなかったら、あれ以上どれほどのカンボジア人が殺されることになったでしょう。

私たちは果たして正直に──人間として、と言ってもかまいません──ヴェトナムのカンボジア侵攻がなかったほうが良かった、と言えるでしょうか。

もしかしたら日本の方々は、第二次世界大戦において他国民に与えた苦しみと、みずからがこうむった大きな受難のゆえに、戦争参加ということに特別の困難をおぼえるのかもしれません。



スーザン・ソンタグ『未来に向けて──往復書簡』(NTT出版『この時代に思う テロへの眼差し』p.144-145)


Asylum seeker's gun death suicide [BBC]

Mr Nasseri had entered the UK in March 2000 and told East Sussex County Council that he had been persecuted in his home city of Tehran for being homosexual.

He said he had been jailed for being gay but had escaped custody and claimed he would be put to death if he returned to Iran.