HODGE'S PARROT

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トム・ケイリンの『恍惚』DVD化

HODGE2004-08-23

Still swooning over Swoon [Advacate]

この『恍惚/SWOON』は、ネイサン・レオポルド・ジュニアとリチャード・ローブという同性愛関係にあった二人の青年が犯した殺人事件を描いたもの。実際の事件を取材したもので、ヒッチコックも『ロープ』に翻案している。しかしトム・ケイリンの映像は、幻想的でまさに耽美的なゲイ・フィルム。
この映画は僕の大好きな映画の一つだけど、その理由が、まさにこの Advocate の記事に書いてあることそのものだ。

While I don’t have the best memory, Swoon is emblazoned into my DNA. Each scene, each camera move and look, I remember as if it were yesterday; I remember what we had for lunch, what the temperature was that day, and what I did that night after work.

追加。
『恍惚』のパンフレットが見つかったので、読んでみたら、いろいろと考えさせられることが。この映画の当時の(日本での)キャッチ・フレーズは「ヴァレンチノより美しい」であるが、どちらかというとフィルム・ノワール(犯罪映画)扱いだったこと。それは、マゾッホが引用されていて詩的かつスタイリッシュな映画であるが、監督が「犯罪が起こると、人々はすぐその動機を探りたがる。だが、それは一つに絞れるものではない。僕はそこに至る連続性を説き明かしたかった」と述べているように、たしかに「ノワール」映画と言えるかもしれない。

それと裁判のシーンで、検察側が<骨相学>を持ち出して、この殺人は「ユダヤ的犯罪/ユダヤ人の犯罪性」だとして死刑を迫るのに対し(ネイサンとリチャードはユダヤ系)、弁護側は<精神分析>を持ち出して、二人の犯罪は同性愛という「狂気」によるもので死刑にはあたらない、と主張するところ。
要するに「骨相学VS精神分析」で、ユダヤ差別を取るか同性愛差別を取るかの選択において、同性愛差別(精神分析)を取って「死刑を免れる──弁護側が勝つ」という構図になっている。
この骨相学と精神分析の「関係」は興味深い。一方は(骨相学)、現在では、「差別知」であることは周知であるのに、精神分析は未だ平然と流通している。しかし両者とも「差別知」であることに変りはない。