HODGE'S PARROT

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イリヤ・カーラーのシューマン&ブラームス



Violin Concertos

Violin Concertos

このカップリングはいいな、と改めて思った──ロベルト・シューマンヨハネス・ブラームスのヴァイオリン協奏曲の組み合わせである。両曲合わせて演奏時間が70分を超えることと、シューマンのVn協奏曲がブラームスの作品に比してこれまであまり演奏されなかったこともあったのだろうが、続けてこの2曲を聴くと、「メン・チャイ」(メンデルスゾーンチャイコフスキー)に匹敵する抜群のカップリングだと思う。調性的にもニ短調ニ長調であるし。もちろん「メン・チャイ」組の華麗さに比べると、われらが「シュー・ブラ」組は地味で暗くて内向的なんだが……しかし、それが、たまらなく、いい*1

このナクソス盤でソロを務めているのはイリヤ・カーラー(Ilya Kaler、b.1963)。ロシアのヴァイオリニストで、パガニーニ国際コンクール(1981年)、シベリウス国際ヴァイオリン・コンクール(1985年)、チャイコフスキー国際コンクール(1986年)でそれぞれ第一位を受賞した、とすごい経歴であるのだが、曲が曲だからなのか、技巧派というよりも、情感豊かな音楽をじっくりと聴かせてくれるヴァイオリニスト……そんな印象を受けた。
特にシューマンの第二楽章──E線のハイポジションや重音なんかぜんぜん使ってなくて(「通常の」演奏効果なんか眼中にないようで)、ほどよい中音域で、オーケストラに溶け込みながら、どこか懐かしいメロディを何かつぶやくように奏でる。それが、たまらなく、いい。


ボーンマス交響楽団もいい。指揮はフィンランドピエタリ・インキネン(Pietari Inkinen、b.1980)──そう、1980年生まれなのだ。とりわけブラームスではオーケストラの響きもこの「ヴァイオリン協奏曲」の大きな魅力であるが、インキネンはそれに十分に応えてくれる。いい指揮者だな、と思う──そのルックスも。


[Pietari Inkinen Official Website]

*1:ジョシュア・ベルとクリストフ・ フォン・ドホナーニ&クリーヴランド管弦楽団がこの「シュー・ブラ」のカップリングでCDをリリースしていた。