HODGE'S PARROT

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ケルビーニ弦楽四重奏団のシューマン



そういえばシューマン弦楽四重奏曲ってまとまった録音を持っていなかったな、とケルビーニ四重奏団(Cherubini-Quartett)の二枚組CDを見つけて、聴いた。録音は1989年から1991年にかけて。

Schumann:String 4tet/Piano 4te

Schumann:String 4tet/Piano 4te


まず、最初に収録されている、有名なピアノ五重奏曲変ホ長調 Op.44 をほんの少し聴くなり、カヴァーを見て四重奏団とピアニストの名前──クリスティアン・ツァハリアス(Christian Zacharias、b.1950)──を改めて確認した。両者とも初めて聴く音楽家だったのだが、そこで繰り広げられている音楽にグッときた。こういうシューマンが聴きたかったんだ! 
テンポは、ほどよく遅め。ピアノも協奏曲のように目立ちすぎず、音が弦楽器にほどよくとけ込んでいる。スター・プレイヤーの個性がぶつかりあう演奏と比べると地味に聴こえるもしれない。しかしここで聴くことのできる叙情性は非常に得難いものだ。響きや音色もかなり練られているというか、内声部がよく聴こえ、重心も安定している。心地よい。常設のクァルテットならではの明澄さと親密さが、とてもいい。
五重奏曲にもまして、弦楽四重奏曲が素晴らしかった。「室内楽の年」にまとまって作曲された Op.41 ──第1番イ短調、第2番ヘ長調、第3番イ長調──は、シューマンの作品の中で決して演奏・録音が多いとは言えないけれど、このケルビーニ四重奏団の演奏を聴いて、本当にグッときた。シューマンはいい曲書くよな。ケルビーニ四重奏団についてもチェックしておきたくなった*1
とくに第2番。長調で書かれてあるが、どことなく陰りを湛えた「感じ」がたまらない。やはりシューマンだな、この憧憬に満ちた感じは。それと第3番の2楽章 Assai agitato も突如として激情が迸り、「うぅ」とくる。この感じ──この切迫感。まさしくシューマン







ところで、フロントカヴァーにちょっとだけ映っている絵は、CDケースの中側にもっとはっきりと(全体ではないが)載っている。棘のあるアザミに鳥や蝶、かたつむりが描かれており、その構図と色彩感がなかなか目を惹く。John Wainwright (ジョン・ウェインライト)の《NATURE'S GLORY》という作品だ。こちら、もしくは、こちらでその絵を見ることができる。
で、この画家の経歴なんかを調べようとしたのだが、「これだ」という情報は見つからなかった──今のところ、例えばウィキペディアのような。それより検索していたら、別の「ジョン・ウェインライト」さんを見つけて、そちらのほうにより興味を持った。英国のミステリ作家でいくつかの短編が邦訳されているジョン・ウェインライトだ。「あなたには何も話す義務はありません」とか「知恵のはたらく子」とかタイトルが強烈。探して読んでみたくなった。

*1:ブックレットには演奏者に関する情報はまったくなかった。メンバーはクリストフ・ポッペン/Christoph Poppen(1st violin)、ヘラルド・シェーネヴェーク/Harald Schoneweg(2nd violin)、ハリオルフ・シュリヒティヒ/Hariolf Schlichtig(viola)、マヌエル・フィッシャー=ディースカウ/Manuel Fischer-Dieskau(violoncello)で、なんとなくディートリヒ・フィッシャー=ディースカウと関係があるのかな、と思った。