やはり見終わっていない『ザ・ホワイトハウス』(The West Wing)。現在シーズン 2 の途中……
ザ・ホワイトハウス 〈サード・シーズン〉 コレクターズ・ボックス [DVD]
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……このドラマのサブ・テキストとして、浅川公紀 著『アメリカ外交の政治過程』を平行しながら読んでいる。アメリカの政策過程に積極的に関わっている「ゲームのプレーヤー」を解説しており、『ザ・ホワイトハウス』をより深く理解し楽しむための格好の参考書だ。
第8章が「利益団体」。アメリカにおけるロビー活動やシンクタンクについて記されている。著者によれば近年著しいのが外国ロビーの参入だという。
まあ、外交官や大使が自国の利益を代表するロビイストとも言えるのだが、その大使館が米国の政治、法律システムに精通したロビイストやロビー会社を雇って、政府や議会に働きかける──その場合に、つまり外国政府や団体に雇われ、その利益を代表してロビー活動をする個人や企業は、外国利益代理人として司法省に登録と活動内容の報告が義務づけられている(外国利益代理人登録法)。
とくに中国は、アメリカ人コンサルタント&ビジネスマンによるロビーの展開にかなりの成功を収めてきた。ある識者によれば、ヘンリー・キッシンジャーこそが「最も重要な中国弁護者」なのだという。最近では旧ソ連の国や企業の新規参入が目立つようだ。
では日本はどうか。アメリカ国内で政治的にまとまった人口をもたない日本は*1、他国に比べて多額の金を払いロビイストを雇っている。例えば貿易問題における反日的な政策や立法を阻止するために。
1988年、89年に日本政府、企業、財団はアメリカの対日政策に影響を与えるためのロビー活動やシンクタンク、学術機関への支援活動に四億ドルを費やしたが、これは他のいかなる政府よりも多額であった。近年、日本は多数の議員や行政官僚経験者をロビイストとして雇い、日米関係、とりわけ貿易政策に関して議会や行政府に影響を及ぼそうとしてきた。またワシントンにある有名なPR会社の社員を雇い、日本のメッセージを発信してきた。このいずれの戦略も日本のロビー活動を強靭にし、しばしば成功に導いてきた。
日本のロビー活動はこれだけではない。ブルッキングス研究所*2、AEI*3、CSIS*4 などのシンクタンクに研究資金を提供し、さまざまな研究、会議、研究講座を支援してきた。このシンクタンク支援によって、日本が直接何らかの恩恵を受けるわけではないが、すくなくとも、シンクタンク支援により独自の分析が可能かどうかという問題提起にはなった。
さらに間接的になるが、さまざまな大学における日本研究プログラムへの資金提供に関しても、同様の問題が浮上している。「日本は大学での日本研究の約四分の三を援助している」という概算もある。このようなあらゆる努力を続けることよって日本のワシントンへのアクセスが可能になり、「日本のロビーが独力で戦いに勝つことはほどんどない」ものの、日本のロビー活動を補強している。
- 作者: 浅川公紀
- 出版社/メーカー: 勁草書房
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*1:このことは、渡辺将人『アメリカ政治の現場から』(文春新書)でも、政治的な(エン)パワーを持たない──あるいは政治に無関心な──「エスニックな」日系人についての指摘があった。
関連エントリー → リアリスト、キッシンジャー「Victory in Iraq no longer possible」と発言
*2:The Brookings Institution
Official site → http://www.brookings.edu/
*3:アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所/American Enterprise Institute
Official site → http://www.aei.org/
*4:戦略国際問題研究所/Center for Strategic and International Studies
Official site → http://www.csis.org/