HODGE'S PARROT

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ケイトー研究所と麻薬戦争



アメリカのリバタリアンシンクタンク、ケイトー研究所/Cato Institute が主催したフォーラムの映像が YouTube で見られるようだ。

January 15, 2008: Matt Welch on John McCain

http://www.youtube.com/catoweeklyvideo


The Conservative Soul - Gay Marriage Question

http://www.youtube.com/catoinstitute


ちなみに後者の同性婚の話題に応えている Andrew Sullivan はゲイであることをオープンにしているライター/コラムニストで、リバタリアン保守、カトリック教徒、そして著名なブロガーである。
[Andrew Sullivan's blog, The Daily Dish]



ケイトー研究所について横江公美 著『第五の権力 アメリカのシンクタンク』を参照したい。リバタリアニズム/Libertarianism に立脚するシンクタンクとして、

  • 政府の影響力の制限/limited government
  • 個人の自由/individual liberty
  • 自由市場/free markets
  • 平和/peace

といった「原則」に配慮した政策の選択肢を提示することがこのシンクタンクのミッションであり、そのための政策フォーラム、広報活動(PR)を活発に行っている。「小さな政府」と「個人の自由」に最大の価値を置くため、社会保障の民営化のような経済面では伝統的な保守派の政策に近いが、一方、麻薬問題のような社会問題・文化問題での主張は、個人の権利を最大に認めるものであり限りなくリベラルに近いというポジション。徹底した自由市場主義を唱え、盗聴やバイオレンス映画の規制には反対している。また、外交政策では徹底した不介入主義を取り、したがって前方展開米軍の撤退と日米安保の破棄も視野に入っている。
とくに眼を惹くのが麻薬について合法化を主張していることだ──そこが伝統的な保守派との大きな違いである。

デビッド・ボーズ副所長(David Boaz)が1988年3月の「ニューヨークタイムズ」紙の論点(Op-Ed)に「麻薬戦争を止めましょう」として、麻薬合法化を主張したことは、全米に激しい論争をまきおこした*1
「麻薬戦争」と称される政府の麻薬撲滅運動には麻薬関連の犯罪や麻薬使用を縮小する効果はほとんどなく、税金の無駄遣いでしかない、というのがボーズの主張だった。麻薬の禁止は、犯罪を抑制するどころか、反対に犯罪が跋扈するサブカルチャーを生み出しており、さらには憲法で認められた個人の自由を侵害している、と論じている。


ケイトー研究所はしばしば、現在の麻薬禁止をかつての禁酒法になぞらえる。周知のとおりアメリカでは1920年に全国で禁酒法が実施され、飲料用アルコールの製造・販売などが禁止されたが、密造酒による健康問題や、密売にかかわるマフィアの出現など逆効果を生み出した末、1933年に廃止された。麻薬の禁止も同様に効果がなく、むしろ副作用の弊害が大きいというのである。
1988年の発表当時は突拍子もない暴論だとされたが、現在ではレーガン政権で国務長官を務めたジョージ・シュルツやコラムニストのウィリアム・バックレィ・ジュニアのような保守派の代表と言われる人々も、「麻薬戦争」は麻薬問題を解決するどころか麻薬犯罪を増やしていると論ずるようになってきている。




横江公美『第五の権力 アメリカのシンクタンク』(文春新書) p.123-124


[David Boaz]

July 20, 2007: David Boaz




ところで、このケイトー研究所というシンクタンクを運営するのに必要な財源に眼を向けると(http://en.wikipedia.org/wiki/Cato_Institute#Funding)、その歳入の内訳は、

  • 74%が個人の寄付金
  • 15%が財団の助成金
  • 3%が企業の寄付
  • 8%が出版その他の収入

である。

シンクタンク(非営利組織)のビジネスモデルは、産出物である政策に関する調査、提案を、政府関係者が利用し、その代金は市民が支払う、というスタイルである。





『第五の権力 アメリカのシンクタンク』 p.24



[Cato Institute]



第五の権力 アメリカのシンクタンク (文春新書)

第五の権力 アメリカのシンクタンク (文春新書)