そうか、モーグ・シンセサイザーと言えば、冨田勲がいたのだった。
1969年、大阪万博の東芝IHIのパビリオンの音楽を録音するため大阪滞在中に、訪れた輸入レコード店で、モーグ・シンセサイザー (MOOG III-P) を全面的に用いて作成されたワルター・カーロス(現在はウェンディ・カーロスWendy Carlos)の『スイッチト・オン・バッハ』と出会い、これこそ求めているものだと直感し、当時で1,000万円もしたというシンセサイザーの購入を決意した。
1971年秋頃、ロバート・モーグ(Robert Moog)が開発した、アナログ・シンセサイザーの草分けと言えるシステムモーグ・シンセサイザーを日本で初めて個人輸入した。当時、「楽器」として輸入しようとしたところ、日本にはまだシンセサイザーというものがなく、税関から軍事機器と疑われたことがあり、数ヶ月間税関に輸入を止められたというエピソードがある。
いま持っているのは、『defferent dimensions』というコンピレーション・アルバムとホルストの『惑星』しかないが、ちょっと聴いてみた。
Different Dimensions (Anthology)
- アーティスト:Tomita
- 発売日: 1997/12/04
- メディア: CD
うわあ、(何度聴いても)面白れー。とくに70年代の古いやつ──例えばドビュッシーの《パスピエ》や《アラベスク》《夢想》、ムソルグスキーの『展覧会の絵』より《卵の殻をつけたひな鳥の踊り》、そして何と言ってもストラヴィンスキーの『火の鳥』より《カスチェイの凶悪な踊り》。
《パスピエ》や《アラベスク》はその「口笛」がノスタルジーを誘うし、ネズミがチューチューと鳴いているみたいな《卵の殻》は可愛いもんだ。《カスチェイ》はピコピコ音が部屋中を駆け巡っている……感じさえする。『惑星』も、原曲の単調さを曝け出しているかのようで、しかし様々な音色を絶妙に重層的に鳴らして、ウルトラモダンな「現代音楽」に仕上げている。感動した。
- アーティスト:Tomita, Isao
- 発売日: 1991/10/29
- メディア: CD