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シンプリシティ・イズ・パワー




日経ビジネス人文庫から、ビル・ジェンセンの『シンプリシティ』を。

シンプリシティ (日経ビジネス人文庫)

シンプリシティ (日経ビジネス人文庫)


著者のビル・ジェンセン氏(Bill Jensen)は、情報構築者という肩書きを持つアメリカのコンサルティング会社「ジェンセン・グループ」の社長兼CEO。この本は、スマートな経営とスマートな働き方についての「ツール」として利用されることを目指し、著わされた。

ジェンセン氏が唱える新ビジネス戦略志向──Work 2.0──は、実に、カンタンである。

複雑な状況を明快にすれば、誰もがよりスマートに働ける。
「重要なことだけをあぶり出し、重要でないことは無視する」

ジェンセンは、フランシス・ベーコン卿の唱える「知は力なり」が、遂にお役御免になった、と高らかに宣言する。ただ「知識」があるというだけでは何の役にも立たない、「知識」をどう活用するかを理解してはじめて「知は力」となる。ここでいう「力(パワー)」は、「緊急を要する案件」と「重要な案件」とを正しく区別できる能力をベースとして生まれる。我々をとりまく無数の情報──「情報の海」──から、本当に重要な事実やデータをいかに素早く選び出せるかにかかっているのだ。しかも我々は、無限の選択に満ちた世界に生きているのだから。

シンプリシティとは、複雑な状況を明快にする技術だ。シンプリシティは、仕事を完遂させる「力」──よりスマートに働くための「力」──を私たちに与えてくれる。企業内に埋もれてしまっているエネルギー、技術革新力、創造性、アイデアを掘り起こし活用させるもの。それがシンプリシティなのだ。


シンプリシティは、あなたが何か仕事をする前に、その仕事にどれだけ注力すべきかを示唆する考え方。それは、こんな感じだ。

  • (それが重要でない仕事なら)シンプリシティは労力を軽減させる「力」
  • (それが重要な仕事なら)シンプリシティは労力を増大させる「力」


『シンプリシティ』 p.15


シンプリシティはトップダウン型の命令ではない、とジェンセンは述べる。「意思決定が主眼となる仕事」において、その「管理」を、わたしたち一人ひとりが自らの選択において行うべきものである。「企業の管理」と「個人の管理」のダイナミックな緊張関係を「正しく認識」することにおいて、シンプリシティは実現される。
つまり、

たとえ経営者の論理を受け入れたとしても、結局、人間は自分の結論にしたがって行動するんだ

という「認識」を受け入れることである。

社員が仕事上の様々な局面でどのような「選択」を行うかは、会社の定めるプランやプロセスといった「会社の論理」により「統治」(ガバナンス)される……わけではない!

私たちはそのような「論理」を構築するために莫大な時間と資金を投資し、それを受け入れさせようと努力する。これは会社側が構築する「プラン」に対する過剰評価であり、社員が実際にはどのように選択を行うかという点を正しく理解していない。


人間の性質はそうしたやり方にしたがうようにはできていない。


確かに私たちは与えられた論理を受け入れはするだろうが、最終的には自分自身の選択にしたがって行動するのだ。
シンプリシティがなぜ有効に機能するか。それは企業の論理ではなく、人間の性質と常識に根拠をおくからだ。




『シンプリシティ』p.37

人は、つねに、本質的に「自分自身で決定を下すことを求めている」という「認識」に立つこと。これである。状況を明快にして秩序を作り出し、<選択>に役立つ投資をすることが大切なのである。会社に求めるのは、社内のすべての人がより的確な選択を容易に迅速に行えるように「環境」を整えること、その「スキル」を習得すること。これである。

もっとも、ジェンセンは、「シンプリシティ」がそれ自体「困難」であることも認めている。それは「誰にとって単純でなければならないのか」という認識も必要だからだ。しかも複雑な状況が明快になれば、当然のことながら、それに付随する責任や信頼、管理能力、リーダーシップといった面も、人の眼に──より明瞭・明快に──曝されることになる。

シンプリシティという「方法論」を、単なる「手軽さ(シンプリスティック)」と混同してはならない、と情報構築者ビル・ジェンセンは、述べる。

ユーザー志向のマス・マーケットの中で、インタラクティブな経験を積みながら成長してきた若者たち。彼らを受け入れなければならないというのは、企業にとってもまた初めての経験になる。近年の情報革命は米国企業の生産性を著しく向上させたが、それは同時に情報感覚を重視する世代を育て上げた。



(中略)


ある意味では、彼らの経験の内容がどうであるか──それが製品の購入であるか、何らかの調査を行った経験であるか、あるいは DoomRiven 、Fast for Word などのゲームをプレイした経験であるか──は関係ない。
重要なことはネット世代の新入社員が会社に入る前の時点において情報空間をナビゲートすることに多くの時間を費やしてきたということである。こうした経験はときには情報リテラシーに関する一定の問題を解決するかもしれない。




『シンプリシティ』 p.239-240

[The Jensen Group]


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