HODGE'S PARROT

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ミサ・サクラ  シューマンの宗教音楽




シューマン:ミサ曲

シューマン:ミサ曲


「我らが」ロベルト・シューマンは、さすが大作曲家だけあって、宗教音楽もモノにしている。《ミサ・サクラ》作品147、《レクイエム》作品148。

シューマン:レクイエム

シューマン:レクイエム

シューマン:ミニョンのためのレクイエム、ミサ曲ハ短調

シューマン:ミニョンのためのレクイエム、ミサ曲ハ短調


あまり演奏/録音されないが、しかしシューマンらしい叙情性と憧憬に満ちた美しい作品で、深い感動を呼び覚ます。とくに《ミサ・サクラ》の「オッフェルトリウム」(OFFERTORIUM)は絶品だと思う。

Tota pulchra es, Maria,
et macula non est in te,
tu gloria Jerusalem,
tu latitia Israel,
tu honorificentia populi nostri,
tu advocata peccatorum!

ところで、シューマンはドイツ人。宗教的にはルター派プロテスタントである。しかしミサ曲やレクイエムはカトリック典礼音楽。これはどういうことか。

このことに関して、山崎浩太郎氏が興味深い指摘をしている。大バッハ没後の北ドイツでは、市民社会の成熟にともなって、教会からの音楽家の「離脱」が始まる──それによって逆に教会音楽家こそが「特殊化」される。一方で、ユダヤ教から改宗したメンデルスゾーンが、プロテスタン教会音楽で活躍した。

面白いのはシューマンである。この人もロマン派時代の北ドイツ人らしく、教会音楽とは無縁だったが、カトリックの町であるデュッセルドルフ音楽監督を引き受けたとき、教会での活動が職務に含まれていたため、《ミサ・サクラ》や《レクイエム》などをラテン語で作曲している。しかしその直前には、ゲーテの詩による《ミニョンのためのレクイエム》を演奏会用音楽としてつくってもいるのだ。こうなると、宗教改革の惨烈な対立の時代はもはや遠く、信仰の「形式」は衣服のように、着脱自在のものであるかのようだ。




「大作曲家たちと宗教音楽 教会と直結していた音楽家たちの宗教に対するスタンス」(『レコード芸術』2005年5月号)

この記事に掲載されている(ドイツ・オーストリア音楽における)「作曲家の宗教傾向」という「チャート図」によると、シューマンウェーバーブラームスらとともに「世俗的傾向の強いプロテスタント」という位置に分類されている。
メンデルスゾーンは、シューマンウェーバーブラームスらよりも「プロテスタン度の高く宗教的」なポジションを占めている。
そしてカトリック度が高くしかも宗教的なポジションにいるのはモーツァルトブルックナーである。

Gloria in excelsis Deo.
Et in terra pax hominibus
bonae voluntatis.


いと高き天には、神に栄光あれ。
地上においては、
善意の人々に平安あれ。




GLORIA/グロリア