HODGE'S PARROT

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ジャック・リーベックのドヴォルザーク


Dvorak: Violin Concerto Sonata & Sonati

Dvorak: Violin Concerto Sonata & Sonati


イギリスのヴァイオリニスト、ジャック・リーベック(Jack Liebeck、b.1980 - )によるドヴォルザークの協奏曲 Op.53 &ソナタ Op.57、ソナチネ Op.100を聴いた。Garry Walker 指揮&ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団、Katya Apekisheva(ピアノ)。

ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲──このディスクは Sony Classical というメジャーレーベルへのデビュー盤なのに、ずいぶんと地味な選曲だな、と思った。数あるヴァイオリン協奏曲のなかで、ベートーヴェンでもメンデルスゾーンでもブルッフでもブラームスでもラロでもサン=サーンスでもなく、パガニーニでもヴィエニャフスキでもヴュータンでもチャイコフスキーでもプロコフィエフでもシベリウスでもなく、ドヴォルザークイ短調協奏曲を選ぶなんて、逆に目立っているんじゃないか。
もちろん選曲だけではなく、(ご覧の通り)ジャケットカヴァーも「目立って」いたので、聴いてみたくなったのだった(でもメンデルスゾーンチャイコフスキーだったら、ちょっと躊躇したかもな。シューマンだったらカヴァーが「地味な人」でも無条件に買うかもしれないけど)。


演奏はとてもよかった。ドヴォルザークの協奏曲は聴くのは初めてではないけれど、CDはもっていなかったはず──という印象しかない地味なイメージの楽曲なのだが、ジャック・リーベックの演奏で聴くと、『テレグラフ』が評しているように、スタイリッシュ(stylish)な音楽になっている。このドヴォルザークの協奏曲は、重音バリバリ、G線を掻き鳴らす、というのではまったくなく、リリックなメロディを程好い音程で歌わせる。そのときのリーベックのヴァイオリンの音色が、凄くいい。高音の美しさが際立っている。グッとくる。

ソナタソナチネも、こんなに魅力的な曲だったのか、と改めて思った。とくにソナチネの第2楽章の瞑想的な感じは絶品だった。ドヴォルザークならではの懐かしいメロディーが胸を直撃する。この「小さなソナタ」にもグッときた。実際、BBC MUSIC MAGAZINE で、ジャック・リーベックはソナチネへの想いを語っている。その想いは、彼の演奏を通じて、十分に伝わってくる。


ジャック・リーベックの次の録音はブラームスソナタだという。この演奏にも期待したい。ちなみに彼のヴァイオリンは、J.B.ガダニーニ/Giovanni Battista Guadagnini の”Ex-Wilhelmj”(1785)だ。


[Jack Liebeck]