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使えない大卒 〜インドの場合

最新の『ニューズウィーク日本版』(2006-6・7号)のカヴァーストーリーは、「学歴難民クライシス」なのだそうだが、こちらはまだ読んでいないので、関連記事を同じ『ニューズウィーク』の2005-12・28/2006-1・4号より。

●あふれ出る「使えない大卒」(The Unemployable Masses)

ニューデリー支局長ロン・モロー氏の記事で、経済界/産業界のニーズにインドの高等教育が応えていない、人材育成が立ち遅れている、という趣旨。

「なんの役にも立たない知識を身につけるために大学で3年間も無駄にすごしてしまった」*1と嘆く、希望の職に就けなかったある大学新卒者のエピソードから記事は始まる。
そしてインドでは推定530万人の大卒者が職にあぶれているという現実が提示され、さらに追い討ちをかけるような「シリコンバレーなど外国に流出したエリートのインド人たちは、いってみればケーキの上のチェリーのようなもの。その下にあるケーキは、あらかた腐っている」というインディアン・エスクプレス・グループの最高経営責任者の弁。


何が原因なのか。

  • インドでは多くの高等教育機関が時代遅れで財政難に陥っている。
  • 大学進学率が低い(アメリカでは82%、インドでは7%)。当局は進学率を25%まで引き上げて、教育の質を高めることを目指しているのだが。
  • 教育予算の低さ。国家予算に占める防衛費の割合は17%、対して教育予算は3%。
  • 植民地時代からの指導方法が根強い──今でもサンスクリット語や哲学などに重きがおかれている。「大学での教育は浮世離れしている」と、聖ヨセフ大学の学長は語る。これでは労働市場からのニーズに応えられない。
  • 平等の建前の下、インドでは、予算は公立大学に平等に配分される。つまり物価の高い都市の大学でも地方の大学でも平等だということだ。
  • 講師の月給は諸手当込みで初任給400ドル程度、教授クラスで1000ドル強。しかし経済学部をトップレベルで卒業した学生ならば、企業から2000ドルの初任給が受け取れる。これほどの格差は、教授陣の民間への流出を当たり前の現象にする。
  • 技術系新卒者の国際レベル。28万人の技術系学生のうち、国際水準に達しているのはわずか4%という調査結果。さらに多国製企業企業の採用レベルに達しているのは、ハンガリーポーランドの50%に対し、インドでは25%。

大卒者の上位10%は世界的なレベルにあるが、残りの90%は「使いものにならない」と、ジャワハルラル・ネール大学のバッタチャリャ副学長は述べる。

バラ色のシナリオもなくはない、とバッタチャリャは指摘する。インドが中国やパキスタンと和平協定を結べば、防衛費が不要になって教育が手厚くなる、というわけだ。こんな夢のようなシナリオを思いつくのも、まだまだ大学改革そのものが「夢物語」だからだ、とバッタチャリャは言う。

*1:しかし大学は「なんの役にも立たない知識を身につけるところだ」と居直ると、藤原正彦国家の品格』の「論理」と接点を持ってしまう。