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エニグマ暗号文、64年ぶりに”クラック・ザ・コード”




第二次大戦中にナチス・ドイツが暗号機「エニグマ」(M4 Enigma machine)を使って発信した暗号文が、ドイツのアマチュア暗号解読家ら、インターネット上の有志によって解読(crack the codes)された。64年ぶりの快挙である。

エニグマ暗号文、64年ぶりに解読 第2次大戦中、ドイツが発信 [Yahoo! News]

エニグマを使って発信された暗号文は当時、英国のブレッチリー・パークにあった暗号研究所で解読されていた。だが、一九四二年にドイツが新しい暗号システムを採用して発信した暗号文は解読できなかったという。
 九五年に三つの未解読暗号文が専門誌に掲載され、アマチュア暗号解読家が謎解きに挑戦。そのうちドイツ人のアマチュア暗号解読家は、自ら暗号解読のソフトを作成してインターネット上で公開し、最終的に有志ら約二千五百人と共同で一つの暗号文を解読した。
 この暗号文は四二年十一月二十五日にドイツのUボートから独海軍の司令官が発信したものと確認され、「連合軍の艦隊を追跡している」などと読めるという。


ナチスのEnigma暗号、分散型コンピューティングで解読 [ITmedia]

分散型コンピューティングを使ってこれを解読しようというプロジェクトは1月9日にスタート。作成に使われたと見られる「Enigma M4」の名を取ってM4プロジェクトと名付けられ、参加ユーザーがコンピュータの空き時間を提供して解読作業を進めた結果、2月20日、1件目の暗号解読に成功した。


Online amateurs crack Nazi codes [BBC NEWS]

The latest attempt to crack the codes was kick-started by Stefan Krah, a German-born violinist with an interest in cryptography and open-source software.


Mr Krah told the BBC News website that "basic human curiosity" had motivated him to crack the codes, but stressed the debt he owed to veteran codebreaking enthusiasts who have spent years researching Enigma.

この暗号破りを企てたのが、ドイツ生まれの Stefan Krah さん。なんとヴァイオリニスト!だという。

"The most amazing thing about the project is the exponential growth of participants. All I did myself was to announce it in two news groups and on one mailing list."

で、BBCによると、以下が暗号文。

"NCZW VUSX PNYM INHZ XMQX SFWX WLKJ AHSH NMCO CCAK UQPM KCSM HKSE INJU SBLK IOSX CKUB HMLL XCSJ USRR DVKO HULX WCCB GVLI YXEO AHXR HKKF VDRE WEZL XOBA FGYU JQUK GRTV UKAM EURB VEKS UHHV OYHA BCJW MAKL FKLM YFVN RIZR VVRT KOFD ANJM OLBG FFLE OPRG TFLV RHOW OPBE KVWM UQFM PWPA RMFH AGKX IIBG"

これを解読して英訳したものが、以下。

"Forced to submerge during attack. Depth charges. Last enemy position 0830h AJ 9863, [course] 220 degrees, [speed] 8 knots. [I am] following [the enemy]. [barometer] falls 14 mb, [wind] nor-nor-east, [force] 4, visibility 10 [nautical miles]."

1942年11月25日、独海軍U264潜水艦の司令官 Kapitanleutnant Hartwig Looks より発せられたメッセージだという。



ところで、エニグマ暗号解読と言えば、忘れてならないのが数学者アラン・チューリングの存在だ。
例えば、星野力『甦るチューリング コンピュータ科学に残された夢』(NTT出版)の第4章「暗号破り」では、エニグマ暗号/エニグママシン、及び、エニグマ暗号解読機(チューリングボンベ)について詳説している。

甦るチューリング―コンピュータ科学に残された夢

甦るチューリング―コンピュータ科学に残された夢


また、土屋大洋氏の「モードとしてのガバナンス」でも、エニグマチューリングについて触れている記事がある。

レッチリー・パークにいた人でもっとも有名なのは、アラン・チューリングであろう。「チューリング・マシン」や「チューリング・テスト」という言葉で知られている。彼はイギリスの暗号解読に多大な貢献をしたにもかかわらず、機密保持を優先する政府から同性愛を理由に追い詰められ、毒りんごをかじって自殺してしまう。


 そのチューリングがドイツのエニグマ暗号解読に作ったのがボンブ(bombe)という巨大な解読機だ。しかし、これもイギリス政府は機密保持のために戦後に破壊してしまった(あるいはどこかに隠したのか)。ブレッチリー・パークに残っているのは安っぽいレプリカだけで、本物はアメリカのNSAの国家暗号学博物館に残っている。

[Alan Turing Home Page by Andrew Hodges]



[アラン・チューリング関連エントリー]

Alan Turing: The Enigma

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The Man Who Knew Too Much: Alan Turing And the Invention of the Computer (Great Discoveries)

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