HODGE'S PARROT

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倉橋由美子死去

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050613-00000415-yom-soci

反俗的なことや思想を事大視する「文学」性を揶揄(やゆ)する「文学的人間を排す」など、辛口エッセーでも知られ、世界的ベストセラーになった米国の作家、故シルヴァスタイン作の絵本「ぼくを探しに」の訳者でも知られた。

『ヴァージニア』を最初に読んだときは結構ショックだったな……。

反核平和教は、その名のとおり、平和を愛好すると称して他力本願の安全保障体制をとっている国民が、平和な時代を生きるために必要な宗教かもしれませんね」と明さんが憂鬱そうに言った。
「戦争の時には平和教に限らず宗教は不要になる。何しろ戦争がこれ以上はないお祭りだから。そして平和になると宗教が必要になる。そこに存在しない戦争を呪詛して祈るために」
健一君がそう言うと、入江さんは感心して、
「お二人ともなかなかうまいことをおっしゃる。平和教徒がお祈りをしている間は戦争は遠くにあって遠雷の如くごろごろ言っている。落雷はない。平和教徒はそれをお祈りが功を奏したものと確信する。ところが戦争がそこまで来るともうお祈りどころではなくなる。逃げるか戦うか、必死の形相で行動するしかなくなります」
「今がその時になったとは……」
「思いません。核戦争の幽霊に怯えているのはまだ宗教が力を失っていない証拠です」
「入江さんは宗教がよほどお嫌いなんですね」と健一君が言った。
「特に反核平和教一神教はね」


倉橋由美子『シュンポシオン』(新潮文庫) P.174