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カリスマ経営者の終焉

最近はスターバックスゲイ・バーでも「株買収」や「TOB」、「M&A」なんていう言葉をよく耳にする。言うまでもなくフジテレビVSライブドア関連だ。さすが「派手な経営者」はロック・スター並みの話題を提供してくれるものだ。恐るべし、ライブドア
ま、「タイプかどうかは別にして」(笑)、ホリエモンは人気者だな、と思った次第。

「派手な経営者」といえば、コンパックを強引に買収したヒューレット・パッカード(HP)のカーリー・フィオリーナ会長兼最高経営責任者を思い浮かべる。が、ご存知のように、フィオリーナ氏は先月2月9日、HPのCEOを解任させられた。
フォーチュン誌の「実業界で最も影響力のある女性50人」で常にトップだったフィオリーナ氏。この「アメリカ経済界で最も目立つ女性経営者として君臨した」元CEOの解任劇について『ニューズウィーク日本版』(2005.2.23)がちょっとした特集を組んでいた。

まず表紙のタイトルに目を引く。曰く「カリスマ女性CEO更迭の人格的事情」。つまりフィオリーナの経営戦略に相当批判的なわけだ。そしてフィオリーナの転落の原因を一言、

株価下落を止められなかった期待はずれの戦略と「目立ちたがり屋」の性格だった

と看破する。

記事では、やはりカリスマ経営者でカルト的人気を誇るアップル・コンピューターのスティーブ・ジョブズとの戦略の比較などがあって、なかなかエンターテイメントな読みものになっている。

ここで重要なポイントは、スティーブ・ジョブズマイクロソフトビル・ゲイツがどんな「派手は流儀」を通しても、彼らは自身が「創業者」であるという強みがあることだ。
例えばアップルとの比較では、「オタクからの信任度」という項目がある。ジョブズは「創業者であり技術革新の主導者として抜群」の評価が与えられているのに対し、フィオリーナの場合は「信任度ゼロ」というキツい評価。

もともとHPはシリコンバレーの「老舗オタク企業」だった。それを東海岸の企業からやってきたマーケティング出身の「女性」が彼女の流儀で「イメチェン」を図ろうとした。HP社としては初の外部CEOであった。

だがHPは65年前にカリフォルニア州パロアルトのガレージで、ビル・ヒューレットとデーヴィッド・パッカードが始めた会社だ。堅実な製品と社風に、フィオリーナの派手な流儀はそぐわなかった。

フィオリーナ氏は、合理化を断行し、業績を上げた社員には多額のボーナスを与えた。ITmedia(ウォール・ストリート・ジャーナル) によると、HPの事業部門を83部門からわずか数部門に整理、幹部の権限を自身の直属に統合することで、権力を中央に集中させた。もちろん、大規模なレイオフやコスト削減策を容赦なく実行した。
ま、そこまではいいとして、しかしHP社専用のジェット機を購入したり、本社のロビーに創業者とフィオリーナの肖像を並べて飾ったり、フィオリーナ氏自身がテレビCMに出演しHPが産声を上げたガレージ(のレプリカ)の前で語ったりと……まるでロックスター。

従業員にしてみれば、創業以来の神聖な文化が汚されていくのを目のあたりにする思いだった。

それでも株価は下がる一方で、バランスシートも改善しなかった。また本業のプリンターも市場での優位が懸念されているという状況。また元CEOは取締役会との協力関係を取り戻せなかった。
そしてカーリー・フィオリーナは辞任した。

現在では、コンパックを手放し「株主の金の無駄遣いである総合企業へのこだわりを捨て、中核事業に専念せよ」という意見がアナリストやジャーナリストによって出されている。地味でも実務的な経営戦略を持つ「指導者」が求められる、ということだ。


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