HODGE'S PARROT

はてなダイアリーから移行しました。まだ未整理中。

ル・マルトー・サン・Gay

以前、「女性が書く同性愛もの」=「やおい」が嫌いなんですね、と問われたことがあった。が、僕にとっては、この「質問」こそ、嫌いだ。

なぜならば、僕が「やおい」を嫌っていることの一つには、「やおい」という一つの<ジャンル>を超えて、同性愛関係を「やおい」と呼んだり、メルヴィルらの古典文学から、ゲイであることをカミングアウトしている作家の作品まで「やおい」と呼ぶことに<怒り>を覚えるからだ。

なぜ、「やおい」という「ネガティヴ」な意味を持つ<異性愛用語>を同性愛一般に「適用」するのか。なぜ<普通に>同性愛やゲイという「差別的/侮蔑的なニュアンスのない」<言葉>を「選択」しないのか。「やおい」という<言葉>の濫用に何の「ためらい」もないのが不思議なくらいだ。

そんなことを思い出したのは、桜沢エリカの『フールズ・パラダイス』(河出書房新社)を読んだからだ。このマンガは素晴らしい。楽しい。面白い。良い気分にさせてくれる。初版が1987年で、ちと古いのだが、このマンガを読んで「共感」できる人は多いんじゃないかと思う──ゲイだろうと、そうでなかろうと。

女性が書いても──異性愛者が書いても、「共感」できる<ゲイもの>はいくらでもある。そういうものを、暴力的に、「やおい」と<名指しすること>。それが大嫌いだ。