低予算、B級ホラーの帝王ことロジャー・コーマン。『アッシャー家の惨劇』は言うまでもなくエドガー・アラン・ポウ原作であるが、どことなくB級の香りが……と言いたいところだが、ヴィンセント・プライスの熱演を始め、なかなか趣のある映像に仕上がっている。脚本はリチャード・マシスン。
原作と違うのは、アッシャー家歴代の悪人たちが紹介され、彼らがフィリップ・ウインスロップ(マーク・デイモン)の夢の中で、まるでゾンビのように登場するところだ──やはりB級ノリか。さらにマデリーンも最後はかなり攻撃的になり、すごい形相で男たちに襲いかかる──うーん、B級。
やはり見所はヴィンセント・プライスの圧倒的な演技、滲み出る雰囲気──あえて言えばオーラだろう。その特異な風貌が画面に映るだけで、映画は風格を増す。それに比べれば、マーク・デイモンは一昔前の男前という感じで、内省的な演技は求めるべくもない。が、その直情的な振る舞いは微笑ましく、また、驚いたときに目を大きく見開くのも可笑しい。