HODGE'S PARROT

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アンジェラ・ヒューイットのJ.S.バッハ《トッカータ》



最近、僕がとても気に入っているCDは、カナダ出身のピアニスト、アンジェラ・ヒューイットAngela Hewitt、b.1958)によるヨハン・セバスティアン・バッハの『トッカータ集』だ。

Toccatas

Toccatas

バッハの《トッカータ》 BWV910-BWV196 の全曲録音は、他のクラヴィーア曲集と比べて、なぜか少ない──ピアノ版の演奏は、なおさらだ。まあ、グレン・グールドが全曲録音しているし、マルタ・アルゲリッチハ短調 BWV911 の図抜けた演奏を残しているから……と思っていたが、アンジェラ・ヒューイットの演奏を聴いてからは、僕にとってのリファレンスはこのヒューイット盤になった。
とくに、ホ短調 BWV914。この曲は《トッカータ集》のみならず、バッハのクラヴィーア曲のなかでも、とりわけ気に入っている曲なのだが、これが、とてもいい。何より、荘重な幻想曲風の部分(モデラート-ポコ・アレグロ-アダージョ)から一転、アレグロのフーガ(三声)になってからの小気味良いスピード感がたまらない。ヒューイットはグールドよりもスピーディに、ピアノならではの強弱と音色を引き分け、楽曲の立体感を際立たせる。素晴らしいテクニック、そして抜群のセンス。
これこそ、バッハ、バッハ、バッハ。
しかも、だ。後半でスピードが増し(そのように聴こえるんだ!)、音が絡み合い(それが同音連打のように聴こえるんだ!)、リズムが強調されると(そこには16分休符があるんだ!)、まるでジャズのようなモダンな音楽に聴こえる。
これこそ、バッハ、バッハ、バッハ。
このフィーリング……グッとくる。


[Angela Hewitt Official site]