コンサートマスター/コンサートミストレスのことを書いていて、思い出したことがある。それは、アマチュアオーケストラでは──とくに弦楽器セクションでは──女性メンバーの人数が男性メンバーをはるかに上回っているのだが、プロのオーケストラとなると──とくに「名門」と呼ばれるオーケストラでは──圧倒的に男性が多いという事実だ。
ウィーンフィルなんてつい最近まで女性の団員を認めてなかった──それに対しアメリカのフェミニストが抗議行動を起こしたことがある。ベルリンフィルはウィーンフィルと比べると女性団員を何人も見かけるのだが、しかしカラヤンが女性クラリネット奏者ザビーネ・マイヤーを入団させようとして、オケと指揮者の関係が険悪になったエピソードはあまりにも有名だ(もちろんマイヤーが女性だからというだけではないだろう、「帝王」の横暴さも関係しているはずだ)。
ところが比較的「新しい」オーケストラ、特に「古楽/オリジナル楽器」のオーケストラは女性団員の比率が高い。
音楽之友社『クラシックディスク・ファイル』(1995年出版)に収録されている、佐々木節夫「オリジナル楽器のオーケストラに女性団員が多いのはなぜだろう」を参照してみたい。
それによると、例えば、ホグウッド指揮、エンシェント室内管弦楽団は61人編成で、うち男性が34名、女性が27名。ブリュッヘン指揮、18世紀オーケストラは44人編成で、男性が31名、女性が13名。ピノック指揮、イングリッシュ・コンサートになると38人編成で、うち男性が17名、女性が21名と、女性メンバーの数が男性メンバーそれを上回っている。
同論説にある「オーケストラ・メンバーの男女構成比」を見ると以下のようになっている。
オーケストラ | 男性 | 女性 | 女性占有率 |
---|---|---|---|
エンシェント室内O | 34 | 27 | 44% |
18世紀O | 31 | 13 | 30% |
アムステルダム・バロックO | 21 | 6 | 22% |
イングリッシュコンサート | 17 | 21 | 55% |
ちなみにフェミニズムが浸透しているアメリカのニューヨーク・フィルハーモニック、そして日本のN響では。
オーケストラ | 男性 | 女性 | 女性占有率 |
---|---|---|---|
ニュヨークPO | 80 | 30 | 27% |
N響 | 100 | 9 | 8% |
これらは約10年前の統計なので、最近ではもう少し違った数値になるかもしれない。